箱根登山電車の箱根湯本-強羅間の営業運転が2020年7月23日、約9カ月ぶりに再開された。19年10月の台風19号により路線は大きな被害を受け、箱根登山鉄道は復旧作業に努めてきた。その最中、追い打ちをかけるように起きたコロナ禍。箱根の街は静かに運転再開の日を迎えた。
台風19号の直撃
営業運転に先立ち、7月9日から箱根湯本-強羅間8.9キロの試運転が始まった。箱根湯本駅を出発した試運転車両は、80パーミル(1000メートルで80メートル登坂)という世界屈指の急勾配を登っていく。その約30分後、今度は強羅発の試運転車両が箱根湯本駅に入っていく。深緑の山々を背に、赤を基調とした登山電車が映える。
19年10月12日、台風19号が箱根を直撃した。雨が上がった翌朝、警戒態勢の下、箱根登山鉄道の職員らは路線の巡回を始めた。そして夜明けとともに、多くの場所で線路に大小の被害が出ていることが明らかになった。
同年は箱根湯本-強羅間の開業100周年に当たる年だった。箱根登山電車は、台風19号の直撃を受けるまでに2度、災害により長期運休を強いられたことがあった。1度目は1923(大正12)年9月の関東大地震によるもので、復旧資材を運ぶための国道1号も大きな損傷を受け、全線の運転再開は翌年末だった。2度目は1948(昭和23)年9月のアイオン台風によるもの。崖崩れで塔ノ沢-大平台駅間の常盤沢橋梁が橋桁ごと流されるなどし、1カ月ほど折り返し運転を余儀なくされた。今回の被害を、同社は「これらに匹敵する」(総務部担当者)とその被害の大きさを表現する。
同社は、2019年の台風直撃6日後の10月18日から、箱根湯本-強羅間で各駅を結ぶ代行バスの運行を始めた。また被災直後より、損傷した路線の復旧作業をスタートさせた。
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