こうした状況を変えるには、「感染症ムラ」の在り方を見直すしかないと私は考えている。
「感染症ムラ」はピラミッド型の組織ではなく、「マフィア型」のネットワークといえる。医系技官・感染研は厚労省に、保健所・地衛研は自治体に属し、研究費の分配を通じて特定の研究者とつながっている。
意思決定プロセスや責任体制は外部からは分からない。だからこそ、このようなことがまかり通ってきた。
そして、メディアは彼らの主張を垂れ流してきた。
前出の押谷教授は、「感染対策、国ごとに大きな違いが」「何が日本と欧米を分けたのか」(「外交」2020年5/6月号)と、いまだに自画自賛するが、欧米と比べ、日本の感染者や死亡者が少なかったのは、アジアで流行したウイルスの遺伝子型が欧米とは異なり、毒性が低かった可能性が高い(図4)。
その証左に、東アジアで見ると、日本は感染者も死亡者も多い。病院や介護施設で院内感染が多発したからで、多発したのは東アジアでは日本だけだ。自画自賛している場合ではない。
今こそ、第1波の経験に基づき、問題点を改善しなければならない。感染症法の改定は喫緊の課題だ。公衆衛生と医療など、提供者の都合による縦割りを廃し、国民視点で見直す必要がある。
PCR検査を保健所・地衛研が独占する合理的な理由はない。医療機関や医師、さらに民間検査会社によるPCR検査などを明確化し、公費で財政支援すべきだ。
本稿では詳述しなかったが、感染者に対する勧告と強制による即時入院に加え、施設への隔離や自宅での待機を明確化し、さらに保健所を介さず入院や隔離した場合にも、公費による支援を導入する。
また、感染研や保健所・地衛研は感染データの収集をIT化して一元管理し、公表を義務付ける。厚労省や感染研が選ぶ一部の研究者だけが独占的に解析する必要はない。国内外を問わず、希望する研究者すべてに提供すべきである。
さらに、感染研の独法化を検討する。「日本版CDC(米疾病対策センター)の設立を求める」という声があるが、今のまま感染研の権限を強化しても、国民のためにはならないだろう。
独法化することで、理事長は公募となり、財務や活動については開示義務が生じる。意思決定プロセスが透明化され、責任が生じる。
「感染症ムラ」をゼロベースで見直す時期である。
(時事通信社「厚生福祉」2020年7月7日号より)
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