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新型コロナで見直される「無駄の効用」 働きアリと怠けアリ、あなたはどっち?

賀茂美則(ルイジアナ州立大学社会学部長/米在住)

「無駄な時間」こそが創造性の生みの親

 前回、「新型コロナで見直される『雑談効果』」について書いたが、今回はその第2弾として、もう少し視野を広げて、新型コロナであぶり出された「無駄の効用」全般について書いてみようと思う。

 「リモートワークは家族が邪魔だったり気が散ったりで効率が悪い」とか「リモートワークの効率をこうやって良くしよう」という記事が多いが、世の中、効率だけではない。「無駄な時間」も大事なのだ。オフィスワークにも廊下や「給湯室のおしゃべり」のように無駄な時間はたくさんあるが、それがあるからこそリフレッシュできるのだ。というのは「雑談効果」で書いたが、一人でいる時の「無駄」にも立派な効用がある。

 どんな職種のどんな仕事をしているかにかかわらず、散歩の途中で新しいアイデアを思い付く、という経験をした人は多いに違いない。筆者は脳科学の専門家ではないが、一つのことを近視眼的に考えるより、一歩下がって、つまりはとりあえず忘れてみた方が違った角度からものが見えてくる、というのはいかにもありそうな話だ。「ウォーリーを探せ」も、無数に並んでいる「W」の中に一つだけある「M」を探すゲームも、コツは一歩下がることなのだ。

 寝ている間の夢や、明け方、目が覚める前に素晴らしいアイデアを思い付く人も多い。枕元にメモ帳を置いている人もいるくらいだ。

 つまりは「メリハリ」なのだ。筆者は遠い昔、総合商社でサラリーマンをしていたが、朝の9時から夕方の6時まで「無駄な時間」なしに働いていると、文字通りヘトヘトになる。今になってみれば少しは無駄な時間をつくっておけばよかった、とも思う。もっとも、毎日始業時から午後3時まで新聞を読んでいて、それからおもむろに働き始めていた課長もどうかとは思うが。

 「ビデオ通話をつなぎっぱなしにしてリモートワーク中の様子を監視する」上司や会社があるそうだが、そんなのは愚の骨頂だ。ずっと監視されている社員が創造的な仕事ができるはずがないし、これでは「会社にいる時間の長さ=業績評価」となる日本の企業の悪弊を助長するだけだろう。仕事をしていく上での「創造性」は無駄な時間からしか生まれない、と言っても過言ではない。

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