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自転車通勤への道、新型コロナで加速もブレーキ要因あり

漆原次郎(科学技術ライター)

自転車通勤は「新しい生活様式」に加わるか
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、通勤での「密」を避ける手だてとして自転車への関心が高まっている。従来、自転車通勤は個人や企業に多くの利点があると言われており、国も「自転車通勤推進企業」の認証制度を始めている。一方で、普及・定着に向けては行政、企業、個人の各レベルでの課題もある。自転車通勤は「新しい生活様式」の一つとなるだろうか。

コロナ禍で高まる自転車通勤への関心
 「通勤に自転車を使いたいという人が増えました。電車内で密になるのを避けたいからという方が多いですね」

 東京都目黒区内で自転車店を経営する男性(32)は、コロナ禍以降の人々の自転車通勤への関心の高まりを実感している。「家にあった自転車に再び乗りたいからと、修理に来店する方も増えています」とも話す。自転車のニーズは間違いなく増えているようだ。

 ただ、会社員の場合は、勤めている会社が通勤手段として認めなければ、自転車通勤をしたくてもできない。au損害保険が、都内で自転車を利用している会社員1500人を対象に2020年5月に行った実態調査によると、会社で自転車通勤が「認められている」と答えた人は50.1%。その中で、自転車通勤をしている人は45.1%だったという。この調査は、政府が緊急事態宣言を発令する前の行動を基に分析したものなので、宣言以降、通勤者の自転車利用率はこれよりも高くなったとは考えられる。

 以前から自転車の利用には、さまざまな利点や効果があるとされてきた。

 個人レベルでは「死亡リスク低減」の効果が示されている。英グラスゴー大学の研究者らが17年、26万3450人を対象として実施した大規模調査によると、車や公共交通機関を使う人、また徒歩で移動していた人に比べ、自転車を使う人の死亡の危険性は著しく低いことが分かった。

 この調査で研究者らは、相対的な危険度である「ハザード比」を算出した。車や交通機関を利用していた人の全要因による死亡危険度を基準の「1」とした場合、自転車利用者はその危険度が「0.59」に抑えられた。徒歩で移動する人たちの危険度と比べても明らかに低かった。

 さらに、心血管疾患やがんといった死因別のハザード比についても、自転車利用者では「0.48」「0.60」と、おおむね同様の結果となった。統計学的に見ると、自転車を利用する生活は死亡リスクが低いということになる。

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