国会では本会議であれ、委員会であれ、与党の質問に耳目を集めるものは少ない。内閣にとっては身内だから疑惑や不正の追及が難しいというのは人情だろうが、特に「安倍1強」になってからは、歯の浮くようなチョウチン質疑も目立つ。【日本テレビ政治部デスク・菊池正史】
しかし昨年10月から12月まで開かれた臨時国会では、参院本会議で自民党から興味深い代表質問が飛び出した。安倍の「お友達」の一人であり、その直前まで経済産業大臣を務めていた世耕弘成が、演壇に立った時だ。
「外国首脳との会談では、相手の提起した論点に一つ一つ丁寧に応答し、相手の心をわしづかみにしていく。そして難病を経験されたからでしょうか、人に対して何とも言えない優しさを示される。そういう総理の人柄に強く惹かれたという面もまた大きいものがあります」
ここまでは、お馴染みのゴマスリかと思って聞いていたら、突然、口調が変わった。
「しかし国会審議の現場では、時々、私の知る総理とは異なった一面が垣間見えることがあります。私は安倍政権に否定的な立場の方にお会いすることがあると、その理由を尋ねるのですが、『答弁の時の居丈高な態度が気に食わない』『やじにいちいち反応するところが嫌いだ』といった理由を挙げる方が少なくありません。総理の普段の人となりを知る者として、これほど残念でもったいなく感じることはありません。総理、これからの国会審議では、ぜひ謙虚で丁寧な対応に徹していただくよう、強くお願いしたいと思います」
今の内閣には「お友達一掃内閣」という批判が付きまとうので、あえて苦言を呈する演出でもあろうが、それにしても本質的、かつ的確な指摘だったと思う。 私が政治取材を始めた1993年の首相は宮沢喜一だった。それから13人の首相を現場で見てきたが、安倍ほどやじを飛ばす首相を見たことがない。
2012年に第2次政権が発足したばかりの時は、たった1年で政権を放棄したという自らの失態を念頭に置いてか、「過去を振り返っても、あるいは前政権を批判しても、今現在、私たちが直面をしている危機、課題が解決されるわけではありません。我々は過去を振り切り、今から未来に向かって力強く第一歩を踏み出していきたい」(2012年12月26日の首相就任会見)などと謙虚に話していた。
ところが、2013年7月の参院選で自民党が圧勝して政権が軌道に乗り始め、反対論も多かった特定秘密保護法の成立にこぎ着けたあたりから野党への敵対姿勢が強くなった。そして2014年になって、念願だった集団的自衛権の行使容認をめぐる議論が活発になり始めると、野党のやじに頻繁に反応し、自らもやじり、すっかり謙虚さは影を潜めることになる。
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