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「夕食で世界旅行」 ある家族のリモートワーク中のストレス解消法

柳沢有紀夫(文筆家/豪在住)

きっかけは娘さんが初めて作った夕食
 「私が家族みんなの夕飯作ろっかな」

 きっかけは大学を卒業し、4月から大学院に通うことになっていた娘さんのひとことだった。

 横浜市に住む村松家は、50代の夫婦と大学院1年生の娘の3人暮らし。夫の広行さん(58歳)は、都内の広告会社で企業イベントのプロデューサーを務める。「3密」忌避のご時世でイベントなどが行えるわけもなく、3月下旬から毎日自宅でリモートワーク中だった。

 美邑(みゆう)さん(22歳)は3月下旬に予定されていた大学の卒業式が中止となり、その直後学校が閉鎖状態に。カフェでのバイトもなくなっていた。唯一「完全在宅」ではなかったのは、ドラッグストアで採用事務の仕事をしている妻の美咲さん(56歳)だけ。自粛中でも大忙しのドラックストアには、「派遣切りなどで職を失った人たちの応募も多く、オンライン面接を取り入れながらも週3回はオフィスに通う日々」だった。

 美邑さんが「家族みんなの夕飯を作る」と宣言したのは、そんな3月末のこと。もともとお菓子作りが得意で自分の朝食や昼食は用意することもあった美邑さんだが、そんなことは初めてだった。「春休みですし、コロナ禍でバイトもなくなり時間ができ、気持ちにも余裕ができたのかもしれません」と母の美咲さんは語る。その日の夕食はチヂミなど彼女の好きな韓国料理だった。

 次の日の夕方、今度は美咲さんが「タイカレーが食べたい」とキッチンに向かう。

 するとその翌日は、それまでも土日やクリスマスなどスペシャルイベントの夕食作りを担当していた広行さんが「今晩は僕がインドカレー」と腕を振るう。美咲さんいわく、「私のタイカレーでライバル心がうずいたのかもしれません」。

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