マンゴーなどのトロピカルフルーツにサトウキビや泡盛など、南国ならではの特産物を多数抱える沖縄県で、新たにコーヒーのブランド化を目指す機運が高まっている。
商業・観光振興をにらんだ生産者に加え、元サッカー日本代表の高原直泰さん(41)も活動を始めるなど、「沖縄コーヒー」を取り巻く情勢はかつてないにぎわいをみせている。
(社会部・前那覇支局=佐藤 大介)
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多くのサッカーファンを魅了してきた元日本代表が、南国の地・沖縄でコーヒー栽培に汗を流している―。那覇支局に勤務する記者が、そんな話を聞き付けたのは元号が令和に変わって間もなくのことだった。
「なぜ高原さんがコーヒーを作っているのか」。全日本コーヒー商工組合連合会認定「コーヒーインストラクター」の資格(2級だが)を持つ記者は居ても立ってもいられず、名護市の農園に車を走らせた。
コバルトブルーの名護湾を一望する小高い丘を登ると、約3000平方メートルのコーヒー畑が広がった。入り口には「沖縄SV(エス・ファウ)コーヒーファーム」の看板が立つ。高原さんが代表を務めるサッカークラブ「沖縄SV」の管理する農園だ。
静岡県出身の高原さんは沖縄に縁もゆかりもなかったが、2015年に同地でクラブを立ち上げ、19年からコーヒー栽培を始めた。
「沖縄に来たのは、観光とITに次ぐスポーツ産業を作ってくれないかと依頼されたから。サッカーが活動の軸だが、スポンサー収入だけに頼っていてはいけない。そこで、農業もクラブの事業にしようと考えた」
漠然とした思いで始めたが、耕作放棄地を耕すなど農業体験を重ねる中で、沖縄が抱える一次産業の課題について考えるようになったという。
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