「教育を受ける権利」は守られたのか
文部科学省が2020年6月3日に発表した資料によると、6月1日の時点で児童生徒の登校を再開した日本の学校は、小学校・中学校が2万9860校、高校は4701校で、小中学校は全体のおよそ99%、高校は同96%に当たる。ただし、このうち9466校(約27%)は毎日ではない「分散登校」、5960校(約17%)が午前中だけなどの「短縮登校」で、元通りに戻ったのはまだ1万9282校と約55%に過ぎない(各割合は分母を総務省統計局が発表している2018年のデータを基に算出)。とはいえ多くの児童生徒が「学校に行ける」という本来なら当たり前の喜びを、実感しているに違いない。
日本で休校要請が始まったのは3月2日。世界に先駆けてのことだったから、延々と3カ月もの間、多くの児童生徒が登校できず自宅待機を強いられた。パンデミックという不測の事態があったとはいえ、日本国憲法第26条でも保証された「教育を受ける権利」が、長期にわたって大きく損なわれることになったとも言える。
では世界の状況はどうなのか。1989年の国連総会で採択された「児童の権利に関する条約」の第28条でも、「教育を受ける権利とその機会の平等」がうたわれているが、コロナ禍の中でそれがどれくらい守られてきたのだろうか。
そこで私がお世話係を務める海外在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の12カ国・地域の精鋭メンバーたちにアンケートを取ってみることにした。協力してくれたのは下記の国々のメンバーたちだ(同じ国の中でも、州や地域によって対応が違う場合もあることをご理解いただきたい)。
●アジア:カンボジア、タイ、台湾
●ヨーロッパ:オーストリア、オランダ、スウェーデン
●北中南米:米国、エクアドル、ペルー
●アフリカ:モーリシャス
●オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド
同じパンデミックに見舞われたと言っても、現状は国によって異なる。
台湾やニュージーランド、オーストラリアの一部の州のように、市中感染はほぼゼロの日が続いて、とりあえず「第1波」に関しては、もう「ポストコロナ(アフターコロナ)」と言ってもいい国もある。
日本やヨーロッパ大陸の国々のように、新規感染者数も減り、なんとなく収束に向かってはいる「ウィズコロナ」の国もある。
一方で米国や南米の国々のように、いまだに多くの新規感染者を出している国もある。
アンケートの結果、それらの状況によって、登校再開事情も大きく変わっていることが分かった。
学校再開は5か国
まずは学校への登校が再開されている国、されていない国がどこかから見てみよう。
【設問1】6月4日時点で登校再開されているか(「学校閉鎖がなかった」も含む)。
◆小中高校全学年、全児童生徒対象に再開されている国 5カ国・地域(ただし「午前登校組、午後登校組」「隔日」などの「分散登校」や「短縮登校」も含む)
台湾、オーストリア、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド
◆一部の学年、児童生徒対象に再開されている国 1カ国
スウェーデン
◆再開されていない国 6カ国
カンボジア、タイ(7月1日より再開予定)、米国、エクアドル、ペルー、モーリシャス
12カ国だけのデータだが、「再開、未再開」はほぼ半々だった。
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