8月の風物詩とも言える「夏の甲子園」。高校野球ファンでなくても、甲子園球場に足を運ぶ機会がなくても、どこか心躍り、テレビ中継に一喜一憂する人が多いのではないか。今年の第102回全国高校野球選手権大会は中止。主催する日本高校野球連盟と朝日新聞社が、新型コロナウイルス感染の懸念を踏まえて5月20日に発表した。それより約2カ月前、「春はセンバツから」と球春到来を告げるはずだった第92回選抜高校野球大会(日本高野連と毎日新聞社が主催)が取りやめに。太平洋戦争の影響で中断していた時期を除き、予定されていた大会の中止は春が史上初、夏は3度目で戦後初、春夏連続は初めてだ。
ただ、「甲子園の熱戦」は別の形で実現する。8月半ばに、選抜大会出場が決まっていた高校が甲子園球場での交流試合(日本高野連主催)に招待され、各校が1試合ずつ行うことが、6月10日に発表された。選抜中止時に構想されていた甲子園出場の権利を持つ32校に対する救済措置でもある。
その32校以外は甲子園で戦う目標こそ失っているものの、一度は消滅した夏の公式戦に臨めることになった。今年は都道府県単位の春季大会が、準々決勝まで終えた沖縄県大会を除き全て中止。高校球児の息吹を身近に感じ取っている都道府県高野連は、とりわけ3年生にとって最後となる夏の地方大会だけは何とか開催できないかと、複数の県が早くから模索してきた。
地方大会の主催者は都道府県高野連と朝日新聞社。5月20日の発表は、夏の甲子園だけでなく地方大会を含め一律の中止だった。だが、直後から都道府県高野連が「代替大会」の形で続々とプランを表明。うねりのような勢いで全国に波及していった。感染防止策の徹底は大前提。当然ながら、地方自治体によって開催に向けたハードルの高さが異なる。
代替大会は都道府県ごとに大会名称を考案。7月、岩手県で「令和2年夏季岩手県高等学校野球大会」が熱戦の火ぶたを切る。都道府県高野連や監督、選手らの声を交え、この2カ月ほどの間に揺れ動いた高校球界をリポートする。(時事通信 高校野球取材班)
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