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コロナ禍経て、いざF1開幕 王者狙うホンダの山本MDに聞く

スポーツ界のベンチマークに

 自動車レースの世界最高峰、F1世界選手権シリーズは3月に予定されていた当初の開幕戦、オーストラリア・グランプリ(GP)が同月13日の開幕日にキャンセルが決まった。参戦チームのスタッフに新型コロナウイルス感染者が出たことが理由だった。以降、伝統のモナコGP中止などを含めレースの延期や中止が相次いだ。国際自動車連盟(FIA)は今季日程の再編に取り組み、ようやく7月5日決勝のオーストリアGPで開幕することを発表した。

 昨年のオーストリアGPではレッドブル・ホンダのエース、マックス・フェルスタッペン(オランダ)が優勝。ホンダはパワーユニット(PU)供給元として2015年のF1復帰後、初勝利を飾った。今季は昨季3勝のフェルスタッペンがメルセデスのルイス・ハミルトン(英国)の牙城に挑み、年間チャンピオンを狙う歴史的なシーズンになるはずだったが、新型コロナの影響で開幕が4カ月も延びた。

 当面は無観客レースで日程もタイトになるが、オフのテストから好調だったホンダ勢がタイトルに挑むシーズンに変わりはない。ホンダF1チームの山本雅史マネージングディレクター(MD)に6月上旬、電話インタビューし、開幕まで1カ月となった今季のF1シリーズへの展望を聞いた。(取材構成 時事通信運動部 佐々木和則)

◇ ◇ ◇

 ―FIAの発表で7月5日決勝のオーストリアGPで開幕し、前半戦8戦の日程が決まった。

 昨年、ホンダのF1復帰後初優勝のサーキットでレッドブルのホームコース。レースは相手もいるが、謙虚さも忘れずに。開幕戦はレッドブル・ホンダ、アルファタウリ・ホンダにとっていい場所だと思っている。

 ―オーストリアは新型コロナウイルスの感染を抑えて国内の感染予防状況も良い。現地ではさまざまな検査があると聞く。レッドブルの努力もあってこぎ着けた。

 レッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツさんとか、(レッドブルF1首脳の)ヘルムート・マルコさんはF1を開幕する意義を持たれており、とても大切だと思う。
 FOM(フォーミュラワン・マネジメント)、FIA、オーストリア政府を含めた皆さんの尽力で開幕にこぎ着けた。F1を温かく前に進めようとする皆さんに感謝ですよね。

 ―3月に当初開幕のオーストラリアGPが公式セッション開始直前に取りやめとなり、その後は新型コロナの世界的な感染拡大でGPの中止や延期が相次いだ。F1が本当に開幕できるのか、疑問に思ったことはなかったのか。

 コロナウイルスへの予防をいくらやっても、巨人の坂本勇人選手の例(6月3日にコロナ感染が判明)を見ても、ワクチンができない限りは、モータースポーツに限らずスポーツ全体、イベント、人が集まることについて日本は特に神経質になって前に進めないといけないんじゃないかと思っていた。まだワクチンができていない中でオーストリア政府、サーキットのオーナー、FIA、FOMを含めての努力で開催される。開幕のオーストリアが最も重要に見えると思える。うまくやり切れれば、スポーツ界のいいベンチマーク(指標)になると思っている。

 ―いろいろ制限がある中での開幕戦になる。

 F1を開幕できるということについては、失敗しないことで世界に対するいいベンチマークになる。ここまでやればできるんだよ、ということを示せるとポジティブに捉えている。ファンの方々のためにも、2日に1回のPCR検査だとか、関係者はホテルから一切出られないとか、いろいろ制約はあるが、ホンダにとってはモータースポーツではオフィシャルに開催されるGPなので、勝ちにいくという意味では全てのみ込んで、勝ちにいきたいと思っている。

 ―エンジンを含むPU供給元のホンダとしては、開幕から勝ちにいってチャンピオンを狙う予定だったが、この延期はどう影響するか。

 豪州GP延期からの3カ月は夏休みを延長してコンストラクター、PUのマニュファクチャラーを含めて、レギュレーションでシャットダウン(施設の閉鎖)があった。どのチームも5月末までシャットダウン。ホンダもPUのファクトリーは5月20日までサーバーを落とした。全て同一条件の中でレースが再開されるという意味では、あまりポジティブやネガティブな思いはありません。レギュレーションでイコールという条件で。ドライバーが3カ月間、レースしていないとか、メカニックやエンジニアには2月のテストから始まって、という本来のリズムがある。メカニックがタイヤ交換の速さなど取り戻せるかなどの心配はあるが、どのチームも同じ。一つ一つ謙虚に勝ちにいきたい。

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