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激痛で涙 話題の検査に衝撃 発熱申告ためらいも 新型コロナ「疑い」で

39.1度に「くらっ」

 「目をつぶっていた方が、痛みが少し緩和されますよ」。完全防護服姿の女性医師が優しくほほ笑んで言った。その片手には細い棒状の物が握られ、それがゆっくりと私の鼻に入れられた。確かな強度を持った異物が鼻の奥に侵入し、わさびを食べたときのつーんとした感覚を数十倍にしたような衝撃が襲う。

 鼻の奥で動く棒によって、どこか大切な場所を削り取られるような激しい痛みが加わる。念入りで執拗(しつよう)な職人の技とでも言うべきか。目など開けられるわけもなく、固く閉じたところで痛みが緩和されている気もしない。

 涙があふれ、鼻水も止まらなくなった。なぜ安易に「検査を受けたい」などと言ってしまったのか。東京都立川市内の病院の外に設置された薄暗いテントの中。初めてPCR検査を受けたのは初夏の陽気となった2020年5月11日昼だった。

【図解】新型コロナウイルス PCR検査の主な流れ

 発端は3日前にさかのぼる。8日夜、記者として時事通信社に勤務する私は仕事を終え、JR中央線の列車に揺られながら帰宅の途に就いていた。週末前の金曜日だが、車内はすいている。何となく肌寒さやだるさを感じた。

 帰宅しても食欲はない。額に手をやると少し熱く、体温計を脇に差し込んだ。短時間で「ピピピッ」と検温が終了したことを示す音。39.1度の数字にくらっとした。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中でも出勤を続けていたが、マスクは着用していたし、手洗いも小まめにしていたつもりだった。人混みにも行っておらず、周りに感染者らしき症状の人もいない。一晩眠れば、平熱に戻っているのでは。淡い期待を抱きながら、普段は使わない和室で布団に潜り込んだ。

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