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平昌五輪から2年、ロコ・ソラーレの現在地 「カー娘」が銅メダルの先に描く思い

世界ツアーランク史上最高の4位

 2018年冬、氷上で輝く笑顔に日本中が酔いしれた。平昌五輪のカーリング女子3位決定戦。日本代表のロコ・ソラーレは英国を破り、日本カーリング界初のメダルをもたらした。試合中に口にした「そだねー」は新語・流行語の年間大賞に選ばれるなど、一大フィーバーを巻き起こしてから、はや2年。取り巻く環境の変化に戸惑いつつ、結束を強めて着実に前進している。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年3月の世界選手権(カナダ)は中止。練習や強化策の工夫、モチベーションの維持が求められている。吉田夕梨花(リード)、鈴木夕湖(セカンド)、吉田知那美(サード)、藤沢五月(スキップ)で構成するメンバー。平昌から22年北京五輪まで4年間の折り返しを過ぎた今、それぞれが抱く思いや夢に迫った。(時事通信運動部 青木貴紀)

◇ ◇ ◇

 19~20年シーズンの活躍は目覚ましかった。ワールドツアーの最高峰、グランドスラムで4大会のうち3度4強入りし、昨年12月の大会では吉田夕を欠きながら3人だけで準決勝へ進む快挙。ツアーランキングは日本勢史上最高の4位で終え、14年ソチ五輪金メダルのカナダチームをも上回った。

 本場カナダを主戦場に世界の強豪チームと試合を重ねながら、重要視したのが「日本選手権で優勝すること」(藤沢)。海外遠征の疲労が残る中、今年2月の日本選手権では前年に苦杯をなめた中部電力を決勝で破り、4年ぶりに頂点に立った。平昌五輪からの確かな成長を印象付け、国内外で高い地力を示した。

 吉田夕「勝てるようになったというより、負けにくくなった、という方がしっくりくる。常に絶好調ではなくても戦える強さが身についてきた」
 吉田知「特に力を入れた『高いパフォーマンスの安定性』は、取り組んだ全ての練習が結果に反映したと感じている。チームで何度も話し合いを重ね、課題を見つけ、対策案を考えてつくり上げるというプロセスを続けた。考え、つくり出す力を養ったシーズンでもあった」

 3月の世界選手権には、銀メダルを獲得した16年以来4年ぶりに出場するはずだった。開幕2日前。広々としたアリーナ会場に大勢の選手や関係者が集まり、参加国の国旗が飾られていた。完成した美しいアイスリンクを眺めながら、「やっとこの舞台に戻ってこられたという、うれしさをかみしめていた」(吉田知)。会場の視察を終えて気持ちが高ぶった。そこから車で宿舎に戻る途中、大会中止の連絡が入った。

 藤沢「まさか、という驚きが最初の気持ち。正直、信じられなかった」
 吉田知「味わったことのない複雑な感情に襲われた。誰も悪くないからこそ、どこにぶつけていいか分からない悔しさ、悲しさ、むなしさ、不安を完全に消化するのは難しかった」

高まるカーリング熱

 平昌五輪を機に注目度が格段に増し、環境は様変わりした。ロコ・ソラーレの快挙は日本中のカーリング熱を高め、2年がたった今でも国内の試合会場には大勢の観客が詰めかける。冬季五輪周期に一過性のブームが訪れる「4年に1度注目されるスポーツ」から脱却する光が差し込んでいる。

 吉田夕「この2年は、ポジティブな意味でもネガティブな意味でも環境の変化が大きく、対応していくための自己コントロールの力が、選手としても一人の人間としても大きく成長した」
 鈴木「たくさんの方が(カーリングに)興味を示してくれるようになり、少しずつスポーツとして根付き始めたのかなと感じる」
 吉田知「氷の外での競技力に関わる部分(生活力、言語、栄養、体調管理、ミーティング力など)の成長を感じられる2年間だった」
 藤沢「カーリングを日本中の方に知ってもらえたことが大きかった。満席も増え、試合中に歓声が聞こえて会場全体が盛り上がると、私たち選手も本当にうれしい」

 新型コロナの影響で予定していた大会が中止となり、約2カ月早くシーズンを終えた。さまざまな制限があっても、チームは大切にしている「ステイ・ポジティブ」を実践。ケアに時間を充てて回復に努めながら、オンラインを活用したチームミーティングや自宅でのトレーニングで来季に向けた準備を進めている。

 吉田知「おざなりにしていたセルフケアや自重トレーニングなどの重要性に気付くことができた。縛りがある中で、昨季よりも良い体に仕上がったら面白いなと思いながら体づくりをしている」
 藤沢「重点的に体のメンテナンスの時間をつくることができ、有意義に過ごせている。おうち時間も多くなり、家族とゆっくり過ごすこともできている」

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