会員限定記事会員限定記事

ウイルスの存在「見える化」への第一歩 産総研、「光らせ動かす」検出技術を開発へ

漆原次郎(科学技術ライター)

見えないからこその災禍、感染症
 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で、誰もが「ウイルスは見えない存在」ということを改めて思い知らされている。人体を含む環境中のどこにウイルスが存在するのかが分からないからこそ、感染症対策に多大な手間がかかり、人々は不安やストレスを募らせていく。

 では、ウイルスの存在を「見える化」することはできないものだろうか。もし、その存在を実際に見ることができれば、私たちも「危険が自明と分かれば近づかない」という単純明快な行動をとることが可能になる。日々の生活の中でウイルスへの向き合い方も大きく変わっていくだろう。

 感染の第2波、第3波が押し寄せると心配される新型コロナウイルスや、その後も生じるであろう新たなウイルス。それらの存在を「見える化」するための技術が、今、日本国内で研究開発されている。産業技術総合研究所(産総研)センシングシステム研究センターの研究者たちは、ウイルスを「光らせて動かす」ことで検出する技術を実用化させようとしている。研究開発を主導する同センターの藤巻真(ふじまきまこと)氏に話を聞いた。

ウイルスを「動かす」ことで検出
 テレビ報道で連日、新型コロナウイルスの顕微鏡写真が映されている通り、ウイルスのかたちを撮影して見ることはできる。だが、これは研究室で電子顕微鏡を使うという特別な環境と手段でのこと。私たちの体内や周辺にウイルスがいるかを調べるには、ウイルス検出法が必要となる。現状では、ウイルスがいる証拠になる物質の有無から、ウイルスがいるかどうかを判断しているのである。

 新型コロナでよく知られるようになったウイルス検出法が「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)」法だ。これは、ウイルスの遺伝子を増幅して検出する手法で、検出精度は高いものの、どの医療機関でも行えるわけではなく、技術や経験も必要なため、日本では実施数が増えていない。

 「イムノクロマト(immuno chromato)法」も話題にのぼっている。調べたいウイルスに特異的に付く抗体を利用し、そのウイルスにある特徴的なたんぱく質を検出してウイルスの有無を確認する。免疫の(immuno)しくみを使い、ラインの発色(chromato)でウイルスの有無を判別するためこう呼ばれる。

 この方法は「抗原検査法」とも報道されており、2020年5月13日、富士レビオの新型コロナウイルス抗原検査キットが厚生労働省に承認されたばかりだ。15―30分ほどで判定でき、PCR法よりはるかに簡便だが、感度が高くないなど精度面の課題を抱えている。

 PCR法に匹敵する精度の高さと、イムノクロマト法と同様の簡便さの両方を兼ね備えたウイルス検査法が実現すれば理想的といえる。そうした方法を、ウイルス自体の存在の「見える化」で実現させようとしているのが、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)センシングシステム研究センターの藤巻真氏らだ。

 「ウイルスを『動かすこと』により検出する。この着想が大きなブレークスルーでした」と、藤巻氏は語る。

 ウイルスそのものをどうにかして目立たせることができれば、ウイルスがそこにあるかどうかをはっきり確認できるようになる。そこで藤巻氏らは、ウイルスに「細工」をして光らせ、かつ、その光を帯びたウイルスを動かすことで、存在を「見える化」することを着想した。

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ