新型コロナウイルス感染拡大によるアスリートへの影響は、日に日に大きくなっている。陸上界でも6月末までの大会が軒並み中止や延期となり、選手は練習環境の確保が難しくなった。男子走り高跳びで2メートル35の日本記録を持つ戸辺直人(28)=JAL=もその一人。走り高跳びの研究者としての顔も併せ持つ第一人者が時事通信の電話インタビューに応じ、現状や1年延期された東京五輪への思い、自宅での過ごし方などを語った。(取材構成 時事通信運動部・青木貴紀)
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現在の練習状況は。
「拠点の筑波大や味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)が使用禁止になり、自宅や近所の空き地で練習している。ジョギングや流し、自重でできる筋力トレーニングなど。NTCで予定していた日本陸連の練習会もなくなった」
競技場が使えず、専門的な練習ができない。
「跳躍練習は無理ですね。しばらくはベースとなる基礎体力を高めることが中心になると思う。コロナの状況に応じて臨機応変にやるしかない」
新型コロナの影響で、東京五輪が1年延期となった。
「今年の夏に向けて数年かけて準備してきたので残念だとは思った。ただ、世の中がこういう状況なので仕方ない。もっと先まで延期の結論を引っ張られる方が困った」
五輪前年が空白のシーズン
世界陸連は4月6日から11月末までの記録は五輪出場資格の対象外と決めた。
「コロナがうまく収束して秋以降に試合が開催できるようになったとしても、今シーズンは五輪出場資格を獲得するために試合に出る意味はなくなっちゃったので、どうしようかなと」
秋に延期された日本選手権で五輪参加標準記録(2メートル33)を満たしても無効となる。
「その時の判断によるが、今年の日本選手権は代表選考にも関わらないのであんまり固執する必要はないかなと思う。とにかく来年の五輪に合わせないといけない」
大会は中止や延期が相次ぎ、先が見通せない。具体的な計画を立てられず、モチベーションを維持するのも難しい。
「あまりそれをストレスに感じたくない。今は次の試合の準備を考えるのは難しいし、そこを考えるとどうしたらいいか分からなくなる。五輪のことだけを考えてやっていくしかない」
今季の目標をどう設定するか。
「出場資格を得られないとしても、今季中に記録をそこまで上げることには意味があると思うので、五輪参加標準記録を一つ目標にしたい」
自宅で過ごす時間が増えたことで新たに取り組んでいることは。
「約1年前に大学院を修了してから競技的に忙しくなったこともあり、論文を読めていなかった。今は最新の情報や知識を得るために、ジャンプ系やトレーニングの論文を読んでいる」
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