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佐々木朗希、入寮から活動休止・自主練習まで ロッテ番記者が追った「令和の怪物」

寮に持ち込んだ筋肉の解説本

 プロ野球ロッテのドラフト1位右腕、佐々木朗希投手(18)がプロ生活をスタートさせてから4カ月近く。新人合同自主トレーニング、沖縄県石垣市での春季キャンプ、全国各地での練習試合、オープン戦とさまざまな土地を訪れ、実戦でのデビュー登板を目指して経験を積んできた。新型コロナウイルス感染拡大の影響でシーズン開幕が先送りされている中でも、その時に備え着々と調整している。岩手県の大船渡高時代に高校生最速の163キロをマークした「令和の怪物」とも呼ばれる逸材。年明けからの歩みを振り返る。(時事通信運動部ロッテ担当 鎌野智樹)

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 1月8日。さいたま市の球団寮に入り、やや緊張した面持ちで語った。「いつでも野球ができるので、練習をたくさんしたい」。岩手の実家で暮らしてきた高校生にとって、初めての寮生活。不安も少々抱いていた。部屋に持ち込んだのは筋肉の構造を解説した本。「(体の)どの場所にどういう筋肉があるのかを知っていれば、トレーナーさんと話す時もスムーズに進む」と意識の高さをうかがわせた。

 うれしいサプライズもあった。旅立ちの朝、高校のチームメートが見送りに訪れ、1着のユニホームを手渡してくれた。そこに記されていたのは仲間からの励ましのメッセージ。自宅にあった高校のユニホームを、家族が本人に秘密で同僚に渡したという。びっしりと書き込まれた言葉の数々。仲間たちの思いも胸に、プロの扉を開いた。

合同自主トレで体力強化

 1月11日。本拠地ゾゾマリンスタジアムで新人合同自主トレーニングが始まり、主に体力強化に取り組んだ。190センチの上背がありながらも体の線はまだ細く、プロ仕様の体格にすることが当面の課題だ。初日に詰めかけたファンは約1200人。初めてのサイン会も実施され、指先がしびれるような寒空の中、約40分間、ファン一人ひとりの目を見ながらペンを走らせた。「ファンの方々が近くにいることで応援されていることを実感したし、その分頑張らないといけないと思った」。プロ野球選手として果たすべき役割を学んだ。

 高校時代は冬場にはあまりやらなかったというキャッチボールも、日に日に強度が増し、距離が延びていった。19日でゾゾマリンでの自主トレが終了。「岩手より暖かい環境でやって、その中で強度も徐々に上げて、順調に練習できた」と満足そうに語った。

知識の吸収も貪欲に

 1月20日。さいたま市の2軍施設、ロッテ浦和球場に場所を移して25日まで練習。22日には春季キャンプで1軍に振り分けられることが決まった。井口資仁監督は「まずは体をつくってから。環境を見ながら彼のペースでやらせたい」。球界の宝を慎重に育てていく方針は崩さなかった。

 自主トレ期間中、グラウンドでの練習以外に座学の時間も設けられた。自主トレ初日は「プロフェッショナルとは」をテーマに、プロ野球選手として社会のリーダーとなる心構えなどに関する講義を受けた。後日、スポーツ整体師の広戸聡一氏が体の構造について講義。体の特性を重心の位置から四つに分類する「4スタンス理論」が紹介された。小学校高学年の時、広戸氏が技術協力した野球漫画『GRAND SLAM』(グランドスラム)を読み、理論の大まかな内容や自分の特性を知っていたという。知識を貪欲に吸収している。

 ここまで約2週間の自主トレを終え、こう話した。「つらい時はあったが、しっかり対応できた。自分の弱点を強化できた」

石垣島で自ら考え練習

 1月26日。2月のキャンプインを前に、一足早くキャンプ地の沖縄県石垣市へ飛んだ。翌日からチームの若手選手らと合同で自主トレを積んだ。

 練習では自ら必要なメニューを考え、体を動かす様子が見られた。雨空で、温暖な石垣島にしては気温が上がらない日もあり、キャッチボールなどの強さは体調なども考慮して毎日変えた。雨上がりのグラウンドで行われたノックを、「下が緩くて、バウンドもイレギュラーが多かったので、練習にならないなと思った」と途中で切り上げる場面もあった。

先輩プロを見て学ぶ

 先輩投手と過ごす時間も増えた。練習の合間には、ブルペンでの投球を食い入るように見詰めた。「一人ひとり良さは違うと思うが、そういうのを見ていて感じられた。そういうセールスポイントが人それぞれあって、すごいなと思った」。キャンプ中もしばしばブルペンに足を運び、チームメートから学ぼうとする姿勢を示した。

 その中でも特に、昨季高卒3年目で8勝を挙げた成長株の21歳、種市篤暉投手を追った。青森県出身で八戸工大一高からドラフト6位で入団。東北育ち同士だ。石垣島での自主トレ初日に並んでランニング。「年齢も近いので、頼れるところは頼っていきたい」。31日にはキャッチボールをし、キャンプ中も一緒に練習することが増えていった。

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