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コートの妖精、激動の物語に幕 一時代築いたシャラポワ

孤高のスター選手

 注目度は群を抜いていた。主催者推薦枠で出場したツアー大会では、並み居る選手たちを押しのけるように広告の中心に位置。実際に集客力も高かった。人気選手のダニエラ・ハンチュコバ(スロバキア)との対戦カードは、チケット争奪戦になることも。大手企業のCMに多く出演するなどプレーを離れても華やかだった。

 コート上での強気な態度もあり、他選手の反感を買うことも多かったようだ。もともと孤高な一面があった。幼少時から金銭面や言語に苦労しつつも慣れない環境で腕を磨いたシャラポワにとって、テニスは「戦い」以外の何ものでもない。自伝には「(ライバルたちと)友人になれば、ナンバーワンになりにくくなる」との言葉も記している。良くも悪くも正直で真っすぐな性格が、そうさせたのだろう。

「違う山を登る準備」

 17年1月に禁止薬物のメルドニウムに陽性反応を示し、ITFから2年間の出場停止処分を受けた。地力が衰えていたとはいえ、テニス界を代表するスター選手の不祥事。記者会見では禁止薬物リストを確認していなかったミスだと説明し、「こういう形で引退したくない」。胸に残るテニスへの思いを明かし、不屈の闘志を感じさせた。

 その後、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議を申し立てて、処分期間が1年3カ月に短縮された。復帰戦が主催者推薦枠での出場となり、トップ選手から「特別扱い」「他の選手に失礼」との批判も浴びた。

 器用な生き方ではなかったが、それを振り返る言葉には充実感がにじむ。「私のテニス人生は山のよう。道のりは谷や回り道ばかりだったけど、頂点からの景色は信じられないほどだった」。そして「違う山を登る準備ができた」という。この先の人生も、強い気持ちで進んでいく。(2020年3月9日配信)

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