全国的に広がりを見せている「新型コロナウイルス感染症」。新型であるがゆえに、臆測も含めてさまざまな情報が錯綜(さくそう)している。現時点で判明していることは何か、どう予防すればよいのか。感染症学を専門としている国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院の岩田◆(◆=敏の偏の下部が「母」)感染症部長に聞いた。
「基礎疾患」のある人は要注意
コロナウイルスは、2002~03年に流行した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や12年以降中東地域を中心に発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」で知られ、重症化するイメージを持たれがちだが、必ずしもそうではないと岩田部長は語る。
「人に感染するコロナウイルスはこれまで(新型発生以前)には6種類が知られていましたが、SARS、MERS以外の4種類は普通の風邪の原因の約10~15%を占めているといわれています」。
今回の新型コロナウイルス感染症は、潜伏期間が1~12.5日、平均5日と比較的長く、8割程度が軽症で済むと考えられることが特徴だという。ただし、高齢者や基礎疾患のある人では重症化しやすいと報告されている。この場合の「基礎疾患」とは何を指すのだろうか。
「糖尿病、高血圧、慢性の腎臓病、ぜんそくや呼吸器疾患、がん、免疫を抑制する薬を飲んでいる場合などです」と、岩田部長は注意を呼び掛けている。
初期症状だけで見分けるのは困難
また、新型コロナウイルス感染症のもう一つの特徴として、風邪のような症状が長く続くことが挙げられているが、新型コロナウイルスと風邪、あるいはインフルエンザで症状に違いがあるのだろうか。
岩田部長は、一般にインフルエンザの場合は急に高熱が出てだるくなり、関節痛もみられる、風邪の場合は鼻水やのどの痛み、せきに加えて熱が出る、と解説した上で、次のように続ける。「新型コロナウイルス感染症は、患者を診ている医師によると全身倦怠(けんたい)感が強いというが、無症状や軽症の場合も多いことや花粉症の患者が多い時期であることを考えると、症状だけで初期に見分けることは医師でも困難と言わざるを得ません」。さらなる検査体制の充実と簡易な検査法の開発が求められている。
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