再演を禁じる規則はない。前出の国際ジャッジは「繰り返し同じものをやったから、飽きたから点数が下がるという要素もルールにはない」と話した。理論的に減点の余地があるとすれば「パフォーマンス(演技)」の評価尺度の一つにある「プロジェクション」だとした上で、「何か伝わってくるものがあるのか、という尺度だが、それでも(影響は)そんなに大きくない」と言う。
採点において再演がプラスに転じる側面も挙げた。「動きが音にぴったりはまってきた。以前より細かいところでしっかり合わせてきた。表情、細かい手の動き、フリーレッグの動かし方などでプログラムの表現したいものがすごく伝わってくる」などと感じられれば、演技構成点における音楽の解釈、それに付随して演技、構成を含む3項目で得点が上がる可能性はあるという。
ジャッジが「リスク」
あるISU関係者は「(連覇した)五輪王者らしいチャレンジとして、彼の中で突き詰めたいという思いなのだろう」と羽生の志を買う。ビールマンスピンやアクセルジャンプのように選手の名前が由来になっている技を挙げて「プログラム自体で(名前が残るような)オリジナリティーのあるものを作り上げたいのかもしれない」と胸の内を察した。その上で、再演は「選手にとってリスクもある」とくぎを刺した。機械ではなく人間であるジャッジが採点するからに他ならない。
ジャッジの経験、資質にばらつきがあるため「同じ曲のプログラムを見て、嫌だと思う人も、内容が変わっていたらすばらしいと思う人もいる。本当に目の肥えた人は(違いが)分かると思うが、個人差は出てくる」と話した。かつては同じ曲による再演を怠慢ととらえる向きもあったという。ブラッシュアップされたプログラムの再演をきちんと評価できるジャッジは多いのか。「そこはクエスチョン」と答え、芸術や表現に関するジャッジ教育がISUに求められると指摘した。
完成されたスケーターなら
かつて、再演でも見たいと感じたプログラムはあったか―。前出の国際ジャッジにそう問うと、元世界女王のカロリナ・コストナー(イタリア)がキャリア終盤にSPで演じたシャンソンの「行かないで」を挙げた。ぴったり自分にはまった曲を見つけるのも大変なことだとした上で、「完成されたスケーターが自分にとって一番いいもの(曲、プログラム)を繰り返し、細かくブラッシュアップして、高い技術に挑んでいく。それはあっていい」との考えを示した。(2020年2月20日配信)
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