2019年秋のラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で初の8強入りを果たし、多くの人々を熱狂させた日本代表。強豪を次々と撃破する中で、オフロードパス、ジャッカル、ブレークダウンなどの専門用語も脚光を浴びた。ここではオフロードパスについて考察してみたい。(時事通信社運動部 鈴木雄大)
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オフロードパスとは、タックルを受けて体勢を崩しながらも味方につなぐパス。決まると、思わず「おおっ」とうなってしまうような、見栄えのするプレーだ。W杯で日本代表はロシアとの開幕戦から披露した。前半11分に右へのバックス展開でCTBラファエレティモシー(神戸製鋼)が倒されながら右手ノールックでFBウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ)へ送る。さらに38分にも右展開でCTB中村亮土(サントリー)が相手に捕まった瞬間に右手でラストパス。いずれもWTB松島幸太朗(サントリー)のトライを引き出した。
芸術的だったのはスコットランド戦の前半25分のトライ。敵陣でフッカー堀江翔太(パナソニック)、ロックのジェームス・ムーア(サニックス)、FBトゥポウとつなぎ、最後はプロップ稲垣啓太(パナソニック)がゴール下に飛び込んだ。3本連続のオフロードパスでもたらされた美しいトライだった。
オフロードのロードは荷物(load)という意味で、パスする姿が荷物を降ろしているように見えることに由来するとされる。片手で出すことが多いため、巧みなハンドリング、相手のタックルから自身の体の芯を外す瞬間的な動き、視野の広さも要求される難しいパスだ。攻撃の勢いを継続できるが、ボールを前に落とすノックオンや相手にインターセプトされて逆襲されるリスクがある。
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