W杯に向けて計画されたカタールで初めての地下鉄「ドーハ・メトロ」が、19年に入って開通した。海沿いを走るレッドラインが5月に一部開業したのを皮切りに、ゴールドライン、グリーンラインと次々に運行をスタート。12月にレッドラインでは、ドーハ中心部とハマド国際空港を結ぶ路線もつながり、世界中から観戦に駆けつけたサポーターたちにとっても利便性は飛躍的に高まった。
ドーハ・メトロは日仏の5社連合で、整備が進められてきた。2020年までにレッド、ゴールド、グリーンの3路線、計37駅の整備完了を目標とした第1段階は、計画通りの営業をスタート。旧市街、高層ビルなどが多く立ち並ぶウエストベイ地区、ルセール地区などの市内中心部に路線網が張り巡らされている。2026年までにさらに路線を拡充し、60以上の駅の建設を進めていく予定だ。
早速、最新の地下鉄を体験してみようとドーハ中心部のDECC駅へ向かった。真新しい駅は、驚くほどきれいだった。エスカレーターとエレベーターが完備され、改札やホームの案内板には英語表記もあり、観光客が迷うことはない。驚いたのは、運賃の安さだった。乗車区間に関わらず、スタンダードと言われる通常の座席なら2リヤル(約60円)、一日乗車券でも6リヤル(約180円)。クレジットカードでの購入も可能だった。物価は日本と同程度か、やや上回るカタールには、大富豪も多く、考えられないような破格だ。現地の人いわく、そもそもそうしたお金に余裕のある人たちは、車移動が基本だから乗らないのだそうだが…。
ただ、カタールらしいのはゴールドクラブという特別席が設定されていることだ。1人掛けの独立した豪華な座席が向かい合う形で配置され、肘掛けまで付いている。気になるのは運賃だが、1回10リヤル(約300円)、一日乗車券30リヤル(約900円)と、こちらも驚くほどの高さではなかった。記者が乗車したときには、物珍しさからだろうか、カタールの市民と思われる団体で座席は埋まっていた。乗車に制限はないので、300円を払えば少しリッチな気分を味わえる。始発は午前6時で、終電が午後11時と設定されていたが、クラブW杯の試合当日のみ終電は午前1時までとなっており、サポーターも不自由なく中心部へ戻ることができていた。ただし、イスラム教の休日にあたる金曜日だけは始発が午後2時からとなっていたので注意が必要かもしれない。
近畿車両などが開発に携わった車両は3両編成で、無人の自動運転だ。ゴールドクラブと子連れの女性向けに設定されたファミリー席を設置した1両と、一般向け2両という構成。乗り心地は実に快適だった。揺れが少なく、車内も静か。白を基調とした照明で車内は明るい。運転席がなく地上を走る区間では先頭車両の大きな窓から景色が一望できるため、その「特別席」には子どもたちや観光客でにぎわっていた。車内には路線図や到着駅が表示される情報画面のほか、大型の荷物置き場やUSB型の充電器も設置されていた。列車は2~3分間隔でどんどんやって来るため、待つストレスもない。DECC駅からW杯の決勝が行われるルサイル競技場の最寄り駅となるルサイル駅まで約15分というアクセスの良さだった。
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