サッカーの各大陸クラブ王者が集まり、世界一を争うクラブワールドカップ(W杯)は、2019年12月11~21日までカタールのドーハで初めて行われた。22年に中東初のW杯開催を控えるカタールにとっては、W杯本番に向けた貴重な「テストイベント」でもあった。今回はクラブW杯の準決勝以降の取材と合わせ、スタジアムや地下鉄など現地の準備状況なども探った。(時事通信運動部・前田悠介)
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東京からドーハまでの直行便は、カタール航空のみの運航だ。飛行時間は偏西風の影響を受けるため、東京からドーハが約11時間30分、ドーハから東京は約9時間30分と2時間も違ってくる。日付変更前に東京を飛び立ちドーハに到着したのは、12月17日早朝6時頃だった。異例の冬開催となるW杯カタール大会の決勝は、建国記念日の同18日に決まっている。3年後には、どの2チームが決勝に進み、どんな盛り上がりを見せているだろうかと思いをはせながら、初めてカタールの地を踏んだ。
「肌寒い」が第一印象だった。昨年9~10月にドーハで開催された陸上の世界選手権では、酷暑によりマラソンや競歩で棄権者が続出した印象が強く残っていただけに、12月にもなるとこれだけ快適なのかと実感した。クラブW杯視察のためにドーハを訪れていた元イングランド代表で母国の名門リバプールOBのジョン・バーンズ氏は、「この時期の気候は素晴らしい。過去のW杯と比較しても、より快適なものとなるだろう」と太鼓判を押す。
12月18日に行われたリバプールの初戦、モンテレイ(メキシコ)との準決勝は、W杯の会場の一つでもあるハリファ競技場で行われた。午後8時30分の試合開始で、温度計は18~19度を推移し、湿度は約75%。試合は後半ロスタイムにフィルミノが決勝ゴールを奪ったリバプールが劇的な勝利を挙げ、4万5416人で埋まったスタジアムは、サポーターの熱気に包まれた。
リバプールと言えば翌19日に、うれしいニュースが飛び込んできた。かねてから移籍話が浮上していた、日本代表の南野拓実のザルツブルクからの加入が正式に発表された。カタールは、南野にとっても思い出の地。2016年にドーハで開催されたリオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねたU23(23歳以下)アジア選手権で、ゴールこそなかったものの主力として活躍した。ザルツブルクの要請で五輪出場を決めた決勝を前にチームを離脱したが、当時を知るカタールW杯組織委員会の広報担当者は「南野はここから世界へと飛躍していったんだ。あの時の活躍は忘れない。本当に印象深い」と興奮気味に語っていたのは、日本人としてもうれしかった。ちなみに南野は、カタールに1-3で敗れた2019年のアジア・カップ決勝でゴールを挙げたことでも、カタールの人たちの印象に強く残っているという。
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