【藤井裕久氏の官界・政界57年】参院を「地方代表」の府に

野党にはシンボルが必要

 -安倍首相は桂太郎を抜いて在任日数が最長になったが、要因は何か。

 一つは、世界が一国主義に偏りつつあったということ。安倍氏も国際協調派ではなく一国至上主義者に近い。それで日本がもうけたというのが第一と思う。

 もう一つは言いにくいが小選挙区制だ。悪用しているとしか思えない。

 私は当時、自民党政治改革本部の末席にいた。中選挙区制は絶対駄目だと言ったのは、伊東正義後藤田正晴両氏だ。私はこの人たちを尊敬していたから同調した。

 中選挙区制では当時、地元で(消費税に)反対と言って、東京に来たときは親分の言う通りに(賛成)する人がいた。この悪さを変えないといけないと言ったのが両氏だった。

 しかし、小選挙区(比例代表並立制)導入で、権力者の言いなりになる人間が出てきた。自民党の話だが、見ていると平成から入ってきた議員にはろくな人がいないのではないか。全部が駄目だと言っているのではない。結局、小選挙区になると権力者の言うことを聞かなければならない。

 もう一つは派手な行動をする人が当選する。地味に真面目に政策を語る人間は受けない。

 -安倍首相のどの点が問題か。

 「戦後レジームからの脱却」という彼の言葉がある。これが一番許せない。

 レジームはフランス革命の言葉だ。ブルボン王朝がけしからんというところから始まった。戦後政治はブルボン王朝のように悪い野郎の集まりだと。

 戦後の政治家たちは皆、米国の占領政策に左右されたというが、そうではない。戦前から日本の軍人政治はけしからんと言ってきた人たちが、日本の戦後政治をつくった。

 -2020年の国内政治の見通しについて。

 吉田茂佐藤栄作中曽根康弘と、長く続いた首相は何かいいことをした。しかし、末路はみじめだ。

 安倍首相は何もやっていない。そして「桜を見る会」が問題化している。どうして、そういう(政治の本流と関係ない)話をしているのだと言う人が必ずいる。

 しかし、(長期政権だった首相は)みんなそういうつまらない話で首になっている。政策の話でつぶれた人はいない。

 -昨年、民主党政権発足から10年経過したが、野党は立ち直っていない。

 そう思う。まず二つの党をつくったのが間違い。これからどうするか。シンボリック(象徴的)な人を親分にすることが大事だ。「山は動いた」と言った土井たか子さんのような人を持ってこないといけない。今の野党はみな秀才だ。ただ、秀才だけでは政治はできない。

 -安倍首相後は誰がよいと思うか。

 自民党に何人かいるが、林芳正参院議員だ。ただ、安倍首相が衆院議員にしない。(安倍氏の地盤の山口県)下関市は、本当は林氏の祖父の地元だ。林氏は(衆院くら替えへ)勝負しないといけない。インテリでは駄目だ。

 -現在の中央省庁の官僚は自身の頃と比べてどうか。

 私が役所に入った時、課長や官房長らは政治家をばかにしていた。もう少しきれいな言葉で言えば軽視していた。「本当に仕事をしているのは俺たちだ」という自負があった。現在は内閣人事局が大きな影響を持ったと思う。

  ◇  ◇

 藤井 裕久氏(ふじい・ひろひさ)1955年東大法卒、大蔵省入省。官房長官秘書官、主計官などを経て76年同省退職。77年参院選初当選、90年衆院選初当選。細川、羽田両政権で蔵相、鳩山政権で財務相。2012年政界引退。衆院当選7回、参院2回。87歳。東京都生まれ。

(時事通信社「地方行政」2020年1月9日号より)

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