中国が覇権を狙う先端技術「ABCD+5G」とは【コメントライナー】

中国ビジネス研究所代表・沈 才彬

 過日、北京の友人と中国のイノベーションについて意見交換した際、「ABCD技術+5Gは特に要注目」という助言を受けた。

 「ABCD技術」とは人工知能(AI)、ブロックチェーン(Blockchain)、クラウド(Cloud)、デジタル(Digital)人民元のことで、5Gは新通信規格だ。

 ◆習主席が大号令

 いずれも次世代の中核技術であり、これら分野における米中技術覇権の争いは、ますます熾烈(しれつ)さを増している。

 AIにおいて、中国は既に米国と肩を並べる世界のトップランナーだ。顔認証技術では、世界上位5社に中国企業が3社を占める。

 Cのクラウド技術で、アリババはアマゾン、グーグルとともに、世界の最先端を走る。

 5G技術については、ファーウェイ(華為技術)が欧米企業を圧倒し、独走している。

 次にBのブロックチェーンとDのデジタル人民元に焦点を当てると、昨年10月24日、中国共産党政治局の第18回学習会が開催された。テーマは「ブロックチェーン技術発展の現状と行方」、講師は浙江大学教授の陳純氏だ。

 政治局学習会は、胡錦濤時代に始まったもので、年8〜10回開かれる。中国の抱える緊急課題、長期ビジョン、世界最新情勢の三つがメインテーマ。

 特定技術に関する勉強会は、今回が初めてで、異例と言わざるを得ない。習近平国家主席は総括発言の中で、「ブロックチェーンを核心的技術の自主的イノベーションの突破口と位置づけ、その発展を加速せよ」と大号令をかけた。

 ◆技術の囲い込み

ブロックチェーンは、分散型台帳のこと。ネット上の複数のコンピューターで取引記録を共有し、互いに監視し合うデータ管理技術だ。過去データの書き換えは事実上、不可能で、改ざんリスクが低い。

 「インターネット以来の発明」とされ、既にデジタル金融や物流など基盤インフラへの応用が進んでいる。

 先行すれば、新サービスや国際金融市場で優位に立つ可能性が高い。習近平政権は技術の囲い込みを強め、まさにこの分野の覇権を狙っている。

 政治局学習会2日後の10月26日、ブロックチェーンのシステム構築に欠かせない「暗号法」が全人代で可決された。

 さらに2日後の28日、中国国際経済交流センター副理事長の黄奇帆氏は講演で、中国人民銀行が「世界で初めてデジタル通貨を発行する中央銀行になる可能性がある」と述べ、その発行にブロックチェーン技術を利用する考えを初めて示した。

 ◆デジタル人民元

デジタル人民元を発行すれば、国内のさまざまなカネの流れを管理し、マネーロンダリング(資金洗浄)を防ぎ、脱税などの抑止につなげる一方、国際的には米ドルの通貨覇権に挑戦する思惑もある。

 現在、世界で最も多く使われる通貨は米ドルで、国際決済に占める割合は4割強。人民元はわずか2%に過ぎない。

 既存の仕組みでは、ドルでの取引には必ず米国の銀行を経由する必要がある。しかし、デジタル人民元を使えば、米国の銀行を通さずに素早く取引を行うことができる。

 将来的には、新興国などでも広く使われ、ドル覇権を脅かす可能性が出てくる。

 (時事通信社「コメントライナー」2020年1月21日号より)

 【筆者紹介】

 沈 才彬(しん・さいひん) 中国江蘇省出身。東京大学客員研究員などを経て、1993年三井物産戦略研究所主任研究員、2001年同研究所中国センター長。08年多摩大学教授となり、12年より現職。多摩大学大学院フェローを兼務。豊富な現地情報に基づく中国政治・経済分析に定評。「中国新興企業の正体」「大研究!中国共産党」など著書多数。

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