中国ウォッチ

左右両方の言論統制強化~「天安門」30年控え緊張高まる~

 中国で民主化を志向する右派とマルクス主義に忠実な左派の両方の言論に対する統制が強化されている。習近平政権は、国内経済の落ち込みなどの影響で社会が動揺する事態を懸念。民主化運動が武力弾圧された天安門事件からちょうど30年(6月4日)になるのを前に、政治的緊張が一段と高まっているようだ。

個人崇拝を公然と批判

 香港メディアなどは3月下旬、中国トップレベルの名門校として知られる清華大学(北京)法学院の許章潤教授が停職処分となったと報じた。言論規制が厳しい同国でも主要大学教員の処分は異例だ。許教授は昨年夏以降に発表した幾つかの論文で、習近平国家主席の個人崇拝を批判したり、「反革命」の暴動鎮圧とされた天安門事件の評価見直しを要求したりした。

 習氏は自分の最高指導者としての権力基盤を固めるため、昨年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で憲法を改正し、2期10年までとされていた国家主席の任期制限を撤廃した。許氏はこれに公然と反対し、改革・開放路線を守り、事実上の終身制だった毛沢東の極左路線で全国が大混乱に陥った文化大革命(文革)の再現を防ぐため、国家主席の任期制を復活させるべきだと主張していた。

 また、その後、重慶師範大でも文学院副教授だった唐雲氏が「国の名誉を傷つける言論」を理由に教員資格を剥奪された。授業中に共産党もしくは党指導者に批判的な発言があったとみられる。学生が当局に密告したという説もある。

「文革時代と同じ」

 一方、北京大学マルクス主義学院の元教員で、左派ウェブサイトの編集者だった柴暁明氏は3月21日、国家政権転覆の疑いで江蘇省南京市国家安全局から居住監視処分を受けた。同処分は、捜査機関が指定した場所に滞在することを強制するもので、事実上の軟禁である。

 インターネット上で出回っている処分通知書(原本の写真)に容疑の詳細は記されていないが、この左派サイト編集部が近年、広東省深セン市などの労働運動を支援していることが問題視されたようだ。社会主義国では労働組合は共産党の下部組織であり、それ以外の自発的な労働運動は禁じられている。

 最近、非公式な会合で話をする機会のあった中国主要大学の関係者は「今の中国は文革時代と同じぐらい言論統制が厳しい。微信(中国版LINE)で知人にメッセージを送る時にも、どう書くかでいろいろと気を使う」「現状には右派も左派も不満がある」と話した。

 また、別の関係者は「中央(指導部)にとって、今年最も重要なのは(社会情勢の)安定維持だ」と強調。大群衆が街頭行動で政権を倒す「カラー革命」をいかに防ぐかが中央の関心事になっていると語った。

(2019年4月3日配信/外信部長・西村哲也)

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