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習近平カラー弱まる~李首相の市場化路線強調~中国施政方針

 中国全国人民代表大会(全人代=国会)で今年の施政方針を示した政府活動報告(3月15日採択)は、市場の管理・統制を重視する保守的な習近平国家主席のカラーが弱まり、市場経済化に積極的な李克強首相の改革路線を強調する内容になった。習氏は表面上、「1強」体制を固めたが、国内経済悪化や米中貿易摩擦の影響で威信が低下している可能性がある。

「市場による資源配分」復活

 昨年の政府活動報告は、2014年から毎年明記されていた「市場が資源配分の中で決定的役割を果たす」という経済改革の大方針(13年の共産党中央委員会総会決定)が削られた。17年秋の党大会で権力基盤を強化した習氏の意向だったとみられる。

 しかし、今年の報告は「市場による資源配分は最も効率的なやり方である」と類似の文言が盛り込まれた。さらに「政府は管理すべきでない事項を断固として市場に委ね、資源の(政府による)直接配分を最大限減らす」と市場化路線を明確にした。

 報告の政府活動の進め方に関する部分では昨年、「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義経済思想」の貫徹を呼び掛けていたが、今年はこれが「発展こそ絶対的道理である、発展は科学的発展、質の高い発展でなければならないという戦略思想」に差し替えられた。

 「発展こそ絶対的道理」は社会主義市場経済路線を打ち出したかつての最高実力者、鄧小平氏(故人)の言葉、「科学的発展」は胡錦濤前国家主席が重視した概念だ。李氏にとって、胡氏は共産主義青年団(共青団)の先輩で、胡氏は鄧氏に抜てきされたという関係にある。

習派の劉副首相を批判か

 今年の報告は「経済の下押し圧力が増している」とした上で、このような状況下の政策は「ペースと度合いをしっかりと把握し、緊縮効果の相乗的拡大を防ぐ必要がある」と主張した。これについて、香港紙・明報は6日の論評で、民間企業の資金難などの問題を引き起こした劉鶴副首相の債務圧縮政策を暗に批判したとの見方を示した。劉氏は習氏の経済ブレーンとして知られる。

 一方、昨年の報告では、政府が行うべき具体的活動を列記する章の第1項は、過剰な債務や生産能力の削減などに重点を置く習派主導の「供給サイド構造改革」推進だったが、今年は「マクロコントロールの革新と充実」に変わった。その項では「市場化改革の考え方とやり方」の重要性が強調された。

 なお、習氏が昨秋から何度か口にしている「自力更生」という保守的スローガンは、報告に書き込まれなかった。

 李氏は15日、全人代閉幕直後の記者会見でも、「市場の活力」を引き出すことにより経済の下押し圧力に抗する方針を強調。「政府の改革は、資源配分で市場の決定的役割をより発揮させるものでなければならない」と語った。

 政府活動報告は李氏率いる国務院(内閣)が全人代に提出するが、主な内容は党中央指導部での討議を経て決まる。党中央では党総書記の習氏がトップ。党内ナンバー2の地位にある李氏は一時、「史上最弱の首相」といわれたものの、実際には鄧小平路線を堅持する改革派(市場派)のリーダーとして存在感を増しているように見える。

(2019年3月18日配信/外信部長・西村哲也)

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