―長官としての任期は2020年東京五輪・パラリンピックの後まで。1年を切りましたが、五輪やパラリンピックの後にレガシーとして何を残せばいいのでしょうか。
子供の数はどんどん減っています。一方で夏の五輪大会の競技数は増えています。1競技あたりの子供の数は減っていくので、子供たちが好きな競技や得意な競技に出合ったり発掘したりして、適材適所の競技をやっていくようにならないと。そうなるようにシステムとして作り上げていかなければいけません。民間のスポーツクラブや地域型スポーツクラブなどがありますが、中学校や小学校をはじめ一つのところでコーチングするのは難しい時代です。受け皿を用意しなければいけない。システムを早く確立していくことが、少子化の中でスポーツ強国、スポーツ立国としてしっかり戦う上でも大事になります。オーバーユースでけがをしたり、バーンアウト(燃え尽き)したりすることを防ぐためにも、指導方法や指導システムも変えていかなければいけません。複数の競技を試すというように、二重三重のことも必要でしょう。部活動の統括組織として日本中学校体育連盟(中体連)や全国高等学校体育連盟(高体連)が長い間けん引役になってきましたが、制度疲労でさび付いてきて、現状に合っていないところもあります。小中学校の先生の組織だけで考えているので、外の考え方に目が向いていないケースも多い。
私たちは横断的に競技を見ているので、いい例をモデルにして違う競技に波及・浸透させていけないかと考えています。かつては学校の部活動が主体で、水泳も学校が中心でしたが、部活動でやっていて代表になる人はいません。水泳クラブがそうであるように、テニス、体操、ゴルフも似た傾向が見られます。世界で戦えているのは、その方向の競技かなと思います。野球を中心とした部活動も少しずつ変えようと、数年前からジャブを打ってきました。旧態依然としたやり方を少しずつ変えていこうとしています。その変化をさらに加速させたい。サッカーで行われているクラブチームと高校がいっしょに試合をするといったような柔軟なこと、これまでの発想を取っ払って一からやっていくことが求められています。
―中学校の部活動では、競技経験のない先生が担当させられている実態があります。もっと外部指導者を起用するなどの対応ができないものでしょうか。
学校の部活動で外部指導者にお願いするにも雇用の際に財源が必要です。東京の杉並区は外部雇用するための財源が年間3500万円ありますが、地方ではそうはいかない。そこで例えば「武道ツーリズム」を使っていくやり方があります。外国人の旅行者に武道のコスチュームを着てもらって1000円頂く、武道のレッスン受けて3000円とか写真撮って1000円頂くというやり方で地方に財源をつくっていく。一朝一夕にはいきませんが、今その流れをつくっています。医療・福祉に何十兆円もかかっている現状を考えると、運動して健康長寿になればもっと予防的なところにお金を使えることになるかもしれません。
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