韓国の大学が直面する悲しい現実 〜中国人留学生は大切なお客さま〜【崔さんの眼】

ジャーナリスト・崔 碩栄

 香港の混乱が収まらない。大学生を中心にしたデモが徐々に広がりを見せる中、香港警察がデモ隊に向けて実弾を発射したり、デモ参加者の中から死者が出たりと、激化する一方だ。香港の状況は、日本や韓国はもちろん、世界各国で関心を持って報道されている。

 ところで現在、香港から2000キロも離れた韓国の大学キャンパスで、香港と中国の「代理戦争」が勃発している。香港の民主主義を支持する一派と、香港警察および中国政府を支持する一派に分かれての「戦争」だ。

 ◆香港の「代理戦争」

 10月末、ソウルの延世大学キャンパスで、香港のデモを支持するスローガンが書かれた横断幕が中国人留学生たちによって撤去される事件が起きた。

 横断幕を設置した韓国人学生たちがそれを阻止しようとしたところ、中国人留学生たちは「One China」というスローガンを叫び、「人の国の問題に口出しするな」「われわれの行動は愛国だ」などと反発した。

 彼らの衝突は一過性のものではなく、続く11月13日にも「Free Hong Kong」というスローガンの書かれた横断幕をめぐり、再び小競り合いが発生した。

 そして、同様のトラブルは延世大学にとどまらない。ソウル大学では、香港への応援メッセージを残すことのできる掲示板に「香港は永遠に中国のもの」というメッセージが残された。

 高麗大学では、香港デモを支持する内容が記載された壁新聞が破られ、代わりに中国の国旗が掲示された。この他、光州の全南大学といった地方の大学からもトラブルは報告されている。

 韓国人学生たちが横断幕を掲げ、あるいは掲示板で主張すれば、中国人留学生たちがそれを撤去し、韓国人学生たちが再び横断幕を掲げ、再び中国人留学生によって撤去され…と、いたちごっこが繰り広げられている。

 ◆軍や警察と対峙した歴史

 幸いなことに、今のところ暴力事件に発展したという報告はないが、いつそれが発生しても、おかしくないような現状に、大学や警察は神経をとがらせていることだろう。

 香港のデモを見て、韓国人が連想するのは1980年の光州事件と、87年の民主化運動だ。

 韓国人は「市民たちが民主化を求め軍や警察と対峙(たいじ)し戦った歴史」を民主主義に対する情熱の証しだと自負している。

 そして、今の大学生たちは、中高生時代から、この先達の功績に自負心を持つよう教育を受けてきた世代だ。彼らが香港の大学生たちを支持するのは、当然の帰結だろう。

 しかし、積極的に支持を表明する学生たちに比べ、大学側の反応はあまりにも消極的だ。

 横断幕は私有財産であり、大学側の許可を得た上で行われた「表現の自由」とも言える。それを誰かに勝手に撤去されるのは、不当だと評価せざるを得ない。

 にもかかわらず、大学側は中国人留学生たちに対して、注意や警告をするどころか、ひたすら声を潜めている。

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