ラグビーワールドカップ(W杯)の準々決勝で南アフリカに負けた日本代表チームながら、選手たちの表情は爽やかだ。「力を出し尽くした」という達成感にあふれている。振り返れば、大きな意味を持ったのが10月13日のスコットランド戦だった。台風受難のW杯の中で、この試合は台風通過直後でも開催が可能になった。準決勝、決勝の舞台にもなっているこの横浜会場には、実は長く洪水と向かい合ってきた川の歴史が背後にある。それを国内外に知ってもらう絶好の機会のようだ。
水を受け入れる高床式スタジアム
対スコットランド戦で、目標だった「ベスト8」入りを決めた日本代表チーム。試合が台風によって中止とならずに、実際に宿敵に力で打ち勝ったことが、日本チームの「誇り」につながったのであろう。選手が試合後に「台風被害にあった皆さんに元気や勇気を与えたかった」と語った言葉は、全国の人々への励ましになった。
舞台となった横浜国際総合競技場(横浜市港北区小机町、通称・日産スタジアム)はJRや市営地下鉄の新横浜駅から徒歩で12~13分の便利な場所に立地する。注目したいのは、昔から洪水に悩まされていた鶴見川の川沿いにあること。その河川敷に隣接する運動場や公園とともに、この競技場は1階が川からあふれた水を受け入れる仕組みで、1000本以上の柱で上物のピッチや観客席を支える構造になっている。
鶴見川は、今回台風19号で氾濫した千曲川や阿武隈川、多摩川といった大河川とは異なって、流域面積がそれほど大きくない都市河川(全長42・5キロメートル)だ。それでも多摩地域の東京都町田市から川崎市や横浜市などの行政区域をまたがり流れ、主要部は国(国土交通省)が長年、治水対策を重視してきた1級河川である。
戦後の成長期、上流の丘陵や田畑が宅地開発されていった結果、下流域での氾濫が頻発するようになった。このため、上流の宅地開発を許可する際も、降った雨を一時的にためる貯水槽や遊水地の設置を義務づけた。中流部でも残された田畑を生かし、あふれそうになった河川水を一時的に貯留する機能を持たせる計画を進めた。横浜国際総合競技場も、普段は公園として利用する「多目的遊水地」の中にあり、洪水を一時的にためる機能を持っている。
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