映画で「共演」した鈴鹿央士さんと藤田真央さんに、そろって話を聞いた。
―物語では、型にはまらない風間塵の演奏がクラシック界に衝撃を与えます。常識の枠を超えた演奏が求められましたが、藤田さんはプレッシャーを感じませんでしたか。
藤田 ないです(笑)。原作を読んだ時は塵に一番共感できたし、石川監督からも「君は塵君だ」と言われたので、気負うことなく演奏できました。
―鈴鹿さんはいかがでしたか。
鈴鹿 僕もプレシャーはなかったんですけど、藤田さんとは理由が違います。初めての映画の現場で、余計なことを考えることすらできなかったですね。
オーディションに合格した後、事務所の社長から「この作品の成否は(抜てきされた)あなたに懸かっている」と言われたけれど、自分では何も分かっていなかった。でも、それが塵という役を演じる上では良かったのかなと思います。
今のようにいろいろなことが分かった上で演じると、完成した映画とは全然違うものになるように思います。
―藤田さんはもともと原作のファンだったとか?
藤田 はい。演奏場面はもちろん、裏方さんとのやりとりや、ファイナル(最終審査)でピアノを弾く前のコンチェルトの指揮者との合わせとか、描写が非常に細かいなと感じました。作家さんはすごいですね。
登場人物もリアル。マサルみたいな華麗な人も、「ああ、こういう人はいるな」という感じです。
コンテスタントの4人が海辺に仲良く行くシーンもいいですよね。(ライバルでありながら)すごく仲が良いのですが、僕も実際のコンクールでは、仲良くなった子たちと食事に行ったり、遊びに行ったりすることがあるので。コンクールを超えた先の人間描写も、恩田さんはよく見てらっしゃるなと思います。
◇演奏の集中力見習いたい―鈴鹿さん
―鈴鹿さんは事前に藤田さんの演奏を見たのが役作りの上で大きな力になったのでは。
鈴鹿 スタッフさんから「藤田さんはリアル塵と言えるようなすごい方。ピアノを弾く前の雰囲気とか、弾いている時の表情や手の動きをしっかり勉強してほしい」と言われました。
印象的だったのが演奏に入る前の様子でした。一直線に椅子に向かうのではなく、ちょっとうろうろする感じがあった。弾く前には緊張するけれど、弾き始めたら緊張はしないんだなと。
いざピアノの前に座って弾き始めると本当にオーラがすごくて。僕もカメラの前で役を演じる時は、そんな違いが出せるようになればいいなと思います。
■4人のピアニスト役の「共演者」■
この作品で、コンクールを競う4人の若きピアニスト役には、それぞれ実際の楽曲を奏でる「共演者」が付いた。亜夜役の松岡茉優さんには河村尚子さん、明石役の松坂桃李さんには福間洸太朗さん、マサル役の森崎ウィンさんには金子三勇士さんと、いずれも一流のピアニストが集結。その演奏が4人の白熱のバトルを彩る。
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