ラグビーW杯2019 日本代表の戦い

村田亙の視点◆世界の力の差がちょっと縮まったW杯、日本は記録と記憶残した

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会決勝が2日に行われ、南アフリカがイングランドを32-12で破り、2007年以来12年ぶり3度目の優勝を果たした。3度の世界一はニュージーランドと並び最多。大会の掉尾を飾った一戦を、元日本代表SHの村田亙氏が振り返った。

決勝は南アのフィジカルとディフェンス力の勝利
 前半はやはり手堅いキックゲームになった。互いに陣地を取って、ハイボールを上げてきた。イングランドにとっては、前半2分で右プロップのシンクラーが頭を打って退いたことが非常に痛かった。そこから、スクラムで押され反則を取られるようになった。南アは前半の終盤にポラードが素晴らしいキックで40メートル前後のPGを2本続けて決めて12―6で折り返し。

 イングランドは後半、蹴らずにボールを継続して立て直そうとしたが、南アのディフェンスが強力だった。ダブルタックルに、密集への仕掛けの速さとパワー。イングランドもブレークダウン(タックル後のボール争奪戦)は強みとしていたのに、南アがスキルの高さとフィジカルで上回った。イングランドは攻めても攻めても南アの分厚い壁に阻まれて、何をしても抜けないという感じだった。少しでもサポートが遅れると、ジャッカルの餌食になった。南アのタックル成功率92%はすごい数字だ。南アは後半早々に入ったリザーブの両プロップもスクラムで押し込んでいた。押されたのは1度だけ。ラインアウトでもクリーンなボールを出させないようにしっかり研究していたのだろう。セットプレーは完勝だった。

 また、南アはSHデクラークが獅子奮迅の働きを見せた。そこにもいるのかと、あらゆる場面に顔を出し、タックルを仕掛けた。一方、イングランドのSHヤングズは細かなミスが多かった。プレッシャーはあったにせよ、普段はあまり見せないようなパスミスもあった。それで、余計にデクラークが目立った。SOポラードもハイパントを自らキャッチしたりと、際立ったプレーをしていた。ゲームメークも含めてハーフ団の差が32-12という結果につながった。

 一時はノートライで終わるではないかと思ったが、試合の終盤にマピンピとコルビの両WTBが後半にトライ。マピンピのトライは、CTBアムのラストパスが素晴らしかった。マピンピのショートパントをキャッチした瞬間にマピンピがそこにいると確信してのパス。強引にいくのではなく、理詰めのパスだった。コルビのトライは個人技で取った。相手はいたのに、カットインで簡単に抜き去った。どちらも南アを象徴するようなトライだった。

 南アのフィジカルとディフェンス力の勝利。僅差で南アが勝つと予想していたが、まさか20点も差がつくとは思わなかった。イングランドは準決勝でニュージーランドに快勝。これでちょっと油断が生じたのかもしない。エディーさん(ジョーンズ監督)にはなかったと思うが、選手にはあったかもしれない。逆に南アは準決勝でウェールズに苦戦し、しっかりと準備してきた。

日本は世界に称賛されるアタック
 イングランドは1試合が中止になったのに対し、南アは中止はなし。それでも優勝できたのは、フィジカルに絶対的な自信があったからだろう。FWはステップを切らずに真っ直ぐ突っ込んでくる。バックスも役割が明確で全員がしっかり仕事をした。突破役、キックの名手がいて、キャッチャー、フィニッシャーがいて。そして、170センチのコルビはステップが切れてスピードもあり、神出鬼没のデクラークは172センチと、2人ともラグビー選手としては小柄だけど身体能力の高さと気の強さ(メンタル)でカバー。応援したくなるチームだった。

 大会全体に目を向けると、世界の力の差がちょっと縮まった印象。その中で、日本代表はしっかりと記録と記憶に残る成果を示した。世界に称賛されるアタックをして、日本がティア1のチームにも勝てると証明できたのが一番大きかった。4年後のフランス大会でさらに進化して、ホームだけでなくアウェーでも勝てるところを見せてほしい。目標はベスト4でもまずは2大会連続のベスト8だと思う。

 選手はSHを中心に見た。私の中ではデクラークがMVPだ。私と同じ左利き。キックも得意だがチャンスと見たら1人でも突破を試みるタイプで親近感がある。彼を見ていて、改めてSHは目立つと応援してもらえると実感した。私も現役時代にすごく応援してもらったという思いがある。あとはフランスのハーフ団、SHのデュポンとSOヌタマックが目を引いた。22歳と20歳。ヌタマックは活躍したが、波があった。キックはもっともっとうまくなる。デュポンはデクラークのよう。フランスのSHは強くて何でもできる。どちらも4年後が楽しみだ。

◇ ◇ ◇

 村田 亙(むらた・わたる)東福岡高時代に全国高校大会出場。専修大で主将を務め、東芝府中では日本選手権3連覇に貢献。91年からW杯に3大会連続出場した。日本人初のプロ選手としてフランスでもプレー。帰国後はヤマハ発動機に所属。40歳で現役引退。日本代表キャップ41。7人制ラグビー日本代表監督を経て、12年4月から専修大監督。51歳。福岡市出身。(2019年11月6日配信)

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