【地球コラム】それでも韓国を知らなければ策を講じられない

政策を見直さない文在寅

 「進歩派」全体ではなく、文在寅個人の特性も大きく作用している。

 同じ「進歩派」でも、盧武鉉大統領は、イラク戦争への参戦や米韓自由貿易協定(FTA)の締結など国益がかかった局面では「実用的に」判断した。その一方、文在寅大統領は原理原則を重視するあまり、状況の変化に応じて政策を見直していくことを国内でもまずしない。典型的には「雇用主導の経済成長」路線で、3年目になっても雇用も経済成長も悪化しているにもかかわらず、「マイウェイ」を貫いている。

 人事もそうで、一度起用した「コード」が合う人物を、ポストを入れ替えながら用いるというスタイルである。8月9日に発表した内閣改造でも、法務部長官に、政権発足以来大統領府で民情首席秘書官を務めた曹国を指名したが、野党だけでなく、国民からも批判・反発が集中している。当初から「コード人事」「使い回し人事」が批判されたが、国会での人事聴聞会に向けて、財産形成過程の不透明さや娘の不正入学疑惑などが続出した。

 娘の不正入学疑惑は朴槿恵大統領が弾劾・罷免される契機になった「チョン・ユラ事件」(朴大統領の友人の娘で、名門女子大学に不正入学した)にダブるし、「機会は平等に、過程は公正に、結果は正義に見合うように」という文大統領の国政哲学に真っ向から反するように見える。特に若年層にとって、入試と就職は一生を左右する一大事で、厳しい競争における公正さを担保することこそが「進歩」という理念の核心である。

 朴槿恵大統領は「奥の院」の執務室や官邸に引きこもり、閣僚や官僚はもちろん、大統領府のスタッフとも対面であまり会わず、独り報告書を読むことを好んだ。文在寅大統領は自らの執務室をスタッフが常駐する建物に移したものの、「ぼっち飯」が多いのは変わらないという(黒田勝弘『韓めし政治学』角川新書、2019年)。しかも、周囲と議論はしないものの、言うだけ言わせて、自らの信念や見解を変えて聞き入れることもあった朴槿恵と異なって、文在寅は初志貫徹するという。

 盧武鉉は当初、税務事件を中心にもうけていた弁護士だったが、後に人権派に転じた。その盧武鉉との出会いが「運命」を定めた文在寅にとって、人権のような「不可分の価値については妥協の余地なし」というのが行動準則なのである。自らの「心情」ではなく、結果に「責任」を負うのが政治家としての徳目だとすると(マックス・ヴェーバー〈脇圭平訳〉『職業としての政治』岩波文庫、1980年)、文在寅は果たして政治家なのかが問われている。

 「徴用工」問題においても、憲法上「対外的に韓国を代表する」大統領としての当事者意識が見られず、国内司法の判断を盾に取るだけである。盧武鉉政権期に、日韓請求権協定に関する韓国政府の法的立場の見直しに政府高官として関わり、「徴用工」は「解決済み」としたこととの整合性さえ示そうとしない。

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