【地球コラム】それでも韓国を知らなければ策を講じられない

「しっぺ返し」戦略、実利より名分重視

 日本の植民地支配から解放されたことを祝う「光復節」の演説で、文在寅大統領は「誰も揺るがせない国」をつくりたいと強調した。109年前の1910年、国権を喪失し、植民地に転落したのは「誰かに揺るがされた」際たる例であるが、「世界6大輸出強国」になった現在も、「日本の不当な輸出規制」によって揺るがされているという認識がある。「先に成長した国が、その後を追って成長する国のハシゴを蹴落としてはならない」という発言には、「まだ韓国の方が遅れている」という自画像が表れている。

 一部には、半導体素材3品目に対する日本の「輸出規制」やホワイトリスト除外は、韓国の主力輸出品である半導体という「急所」を狙い撃ちし、日本の製造業にグッと差をつけたサムスンに一矢報いるものだという「陰謀論」すら見られる。

 古来、朝鮮半島は「外勢」によって繰り返し侵略されてきたという被害者意識がある中で、せめて将来に向けて平和体制の構築だけは、自らが主導したいという使命感が文在寅政権には強い。だからこそ、就任以来一貫して北朝鮮に対話を呼び掛け、まず南北で板門店宣言(2018年4月)を高らかに謳(うた)い上げ、それを米朝シンガポール共同声明(同年6月)につないだと自負してきた。事実、米朝シンガポール共同声明に盛り込まれた「朝鮮半島の完全な非核化」は「板門店宣言を再確認」するかたちになっている。

 こうした南北と米朝の連動に比べると、日本は「朝鮮半島に持続的かつ安定した平和体制を築くため共に取り組む」姿勢を示さず、むしろ阻害する存在に映っている。「平昌冬季五輪当時も米韓合同演習の延期に反対し、北朝鮮との対話や協力が進んでいる最中にも制裁や圧力だけが唯一の方法であると主張」したというのである(韓国大統領府ウェブサイト「ホワイトリストからの韓国除外という日本の決定に関する国家安保室第2次長によるブリーフィング」、8月2日)。

 日韓GSOMIA破棄についても、「日本がすでに、韓国との間には(安全保障に関して)基本的な信頼関係が潰(つい)えたとして輸出規制を行っている状況において、われわれとしてもそれを維持する名分が失われた」と正当化されている(韓国大統領府ウェブサイト「韓日GSOMIA終了に関する国家安保室第2次長によるブリーフィング」、8月23日」)。日本に先にしてやられた以上、やり返すのだという「しっぺ返し(tit for tat)」戦略であり、実利より「名分」を重視するという姿勢である。

 日本からすると、旧朝鮮半島出身労働者(いわゆる「徴用工」)問題に関する大法院(韓国最高裁)判決(2018年10月)とそれに伴う国際法違反状態の放置を差し置いて「居直るな」というところだが、この件も、そもそもの原因は日本にあり、にもかかわらず解決に向けた案を提案するなど真摯(しんし)に臨んできたのに、一蹴されたのは「国としての自尊心」が傷つけられたという認識なのである。

◆地球コラム バックナンバー◆

特集

コラム・連載

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ