ランナーが履くスパイクをめぐり、陸上界に新たな革命が起きるかもしれない。長距離では近年、ナイキの「厚底」シューズが席巻している。トップ選手がこぞって愛用し、マラソンの世界記録や日本記録が次々と塗り替えられた。そして、今度は短距離でも革新的なスパイクの開発が着々と進んでおり、試合でも使用され始めた。スポーツメーカーのアシックスが手掛ける「ピンなし」スパイクだ。(時事通信運動部 青木貴紀)
◇ ◇ ◇
通常の陸上スパイクは底面に金属製のピンを数本配置し、ピンで地面を捉えることで推進力を引き出す。一方、新型スパイクはピンの代わりにカーボンファイバー素材をベースとした複雑な立体構造を靴底に取り入れた。「スパイクピンが地面に刺さる感覚がある」という選手の声をきっかけに、2015年夏から開発に着手。何度も検証と研究を繰り返す中で新たな発想が生まれたという。
機能設計を担当する石川達也さん(33)によると、地面を「点」ではなく「線」で捉えられるようにすることで、より効率的に高い推進力を得られると期待でき、軽さも追求できる。石川さんは「ピンをなくすことで20グラムは軽くなる。(片足)100グラムは切りたい」と大幅な軽量化に意欲を示す。
新着
会員限定