佐々木朗希。17歳。「163キロ右腕」として今春以降、高校野球ファンだけでなくスポーツ界で広く知られるようになった。岩手県立大船渡高校の3年生。これまで甲子園出場経験はないが、昨秋の県大会で157キロを出すなど高校球界では2019年のドラフト候補に挙がり、プロ野球のスカウトも早くから注目していた。ひと冬越えた今春、鍛え上げた足腰を生かして驚くべき快速球を披露。スケールの大きさは、同じ岩手県出身で米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手に引けを取らない。
目標の甲子園は今夏がラストチャンス。大舞台を目指し、7月16日に第101回全国高校野球選手権岩手大会の初戦に臨む。「令和の怪物」とも称される逸材の潜在能力とは―。(時事通信運動部・小松泰樹、仙台支社・三浦早貴、盛岡支局・佐藤善矢)
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4月6日、奈良県内でのU-18(18歳以下)高校日本代表候補合宿に参加した際に紅白戦で投げ、スカウトのスピードガンが驚異的な163キロを計測。それより数日前、今年初めて実戦に登板した作新学院(栃木)との練習試合では、いきなり156キロを出している。短い間に日米のスカウト陣らに衝撃を与えた。
5月18日。春季岩手県大会の1回戦で、大船渡は釜石に延長十回4―5でサヨナラ負けした。佐々木は4番右翼。マウンドに立つことはなかった。先発した和田吟太投手が踏ん張り、打線が徐々に盛り返していった展開。国保陽平監督は和田の成長に期待して完投させたと明かした。佐々木も「夏につながると考えたら、それがベストだと思う」。大船渡の春があっさりと終わり、最後の夏はノーシードで挑むことになった。
県大会の前に沿岸南地区予選があり、大船渡は2試合を勝ち上がった。今年初の公式戦となった5月3日の住田戦で、佐々木は先発して3回を1安打無失点。スカウトが持参のスピードガンで最速は139キロ。明らかに力を抑制した省エネ投球だった。
一躍、全国区の知名度になった剛腕投手を一目見ようと、住田戦が行われた岩手県釜石市の球場は、のどかな環境にありながら満員。開門を1時間も前倒しして午前6時にするなど、地方球場が異例の熱気に包まれたが、佐々木の速球は、春先よりもスピードを20キロ前後も抑えたことになる。これには理由があった。
佐々木によると、「4、5割程度」の力の入れ具合。国保監督はU―18の合宿後、4月中旬に骨密度検査を受けさせ、その結果を踏まえて「まだスピードに耐えられる体ではない」と説明した。「(合宿では)周りの選手のレベルが高く、(163キロが)出てしまった」
超という字が付く有望な右腕。成長期の高校生だけに、慎重を期したのだろう。次の試合、沿岸地区予選第1代表決定戦(高田戦)は登板せず、4番右翼で4打数4安打2打点。結局、春の公式戦登板はわずか3イニングにとどまった。
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