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箱根駅伝から日本マラソン界の救世主へ 大迫傑と設楽悠太

同学年のライバル

 大迫傑(ナイキ)と設楽悠太(ホンダ)。性格だけでなくマラソンに取り組む姿勢でも好対照の二人が2018年、男子マラソンの日本記録を相次いで塗り替えた。長年低迷し続けてきた日本男子マラソン界。20年東京五輪を1年後に控え、願ってもない期待の存在が現れた。9月15日に開催される東京五輪マラソン代表選考レースのマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では、大迫と設楽の走りが最も注目される。

 18年2月25日の東京マラソンで、設楽は2時間6分11秒で日本人トップの2位となり、高岡寿成が保持していた日本記録を16年ぶりに5秒更新した。同年10月7日のシカゴ・マラソンに臨んだ大迫は2時間5分50秒で3位に入り、設楽の日本記録をさらに21秒縮めた。日本マラソン界の救世主となり得る二人の人物像とマラソン観などを探った。(時事通信社解説委員・滝川哲也)

ストイックで負けず嫌い 大迫

 大迫は、冷静沈着な性格に加えストイックな一面を併せ持つ。東京・町田市立金井中で陸上を始め、全日本中学選手権3000メートルで3位に入賞した。高校進学の際は、親元を離れて長野県の佐久長聖高を選択。けがに悩まされた時期もあったが、練習ができない期間は糖質を制限し体重を増やさないよう心掛けるなど、持ち前の自制心でブランクを乗り切った。高校トップクラスの選手がそろう同校でもまれるうちに、生来の「負けず嫌い」の性格が、アスリートとして不可欠な形で大きく膨らんでいった。

 早い段階から視線は世界に向いていた。「日本流のトレーニングでは世界のトップに追いつけない」。早大卒業後は日清食品グループ入りしたが、日本の実業団に籍を置くことを潔しとせずに渡米。「ナイキ・オレゴン・プロジェクト」にアジア人として初めて所属することに。退路が許されないプロランナーという道をあえて選択した。日本の企業に属していれば、けがをしても安定した収入が保障される。しかし、プロランナーゆえに大きな故障をしたら収入が激減する。同プロジェクトで日本人は大迫だけ。英会話も初歩からのスタートだった。自ら厳しい環境に自分を置いた。これまでの日本にはないタイプの選手が出現したと言える。

何事にもマイペース 設楽

 設楽の性格をひと言で表すと「無頓着」だろう。とにかく細かなことを気にしないタイプ。何事にもマイペースで、東洋大時代も酒井俊幸監督ら周りがハラハラするほど。日本記録を樹立後、東洋大の公式サイトで設楽と対談した同監督は「ひと言で、マイペースに尽きますね。常にどこか“ホワン”としていて、せっかちな部分が全くない。陸上では、レースの前に召集があるんですが、こっちが焦るくらい、ギリギリまで来ないんですよ。何をするにも、靴紐を結ぶのですらも、ゆったり、ゆったり。早いのは、練習を上がる時くらいですかね。あんまり焦ったことないんじゃない」と語っている。

 トップクラスのマラソンランナーは食生活に気を使うもの。しかし、設楽は食に関してもこだわりがない。ホンダの選手寮で提供される食事は、栄養面できっちり管理されているが、野菜が嫌いな設楽は、東洋大時代も社会人となった現在も、野菜を積極的に摂ろうとはしない。大好物のスナック菓子を口にすることが多く、お酒も好き。練習がフリーの日などに誘われると、喜んで飲みに行くそうだ。もちろん練習の流れや体調を見極めて飲む日を選んでいるのだろうが、サラリーマン同様に気分転換を図っているのかもしれない。

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