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エンターテインメントで〝反戦〟打ち出す 「アルキメデスの大戦」の山崎貴監督

現代の危うい空気を作品に反映

 2013年公開の映画「永遠の0」で大ヒットを飛ばした山崎貴監督が、新作「アルキメデスの大戦」(7月26日、東宝系で全国公開)で再び、太平洋戦争を舞台にした作品にチャレンジした。前回はゼロ戦の迫力ある空中戦が話題を呼んだが、今回は〝悲運の戦艦〟大和の最期を、得意のVFX技術を駆使してダイナミックに描き出す。

 原作は三田紀房氏による同名漫画で、無謀な巨大戦艦の建造計画の問題点を数学的に立証し、建造をストップさせようとする若き天才数学者(菅田将暉)の姿を描く異色の戦争映画。目指したのは「エンターテインメントでありながら、見た後に複雑な気持ちになる反戦映画」。ドラマ的にも見応えのある内容に仕上げている。

   ※  ※  ※  ※  ※

 ―以前から大和を題材にした映画を作りたいと思っていたそうですね。
 大和は、後世にファンは多いけれど、戦争で活躍できなかったことも含めて、非常に悲しい運命を背負っている戦艦です。
 沈んだ時には3000人以上が亡くなったとされています。いわゆる航空特攻で亡くなった方が4000人と言われていますが、それに近い数字の人たちが一つの船が沈んだだけで死んでしまった。それがすごくショッキングでした。
 大和の映画を作ろうとすると、どうしても「男たちの大和/YAMATO」(2005年公開、佐藤純彌監督)のように、乗組員たちがどういう思いで大和に乗り、沈んでいったかを描く作品になってしまう。そうではない切り口はないか、と思っていた時に、三田先生の原作漫画に出合いました。

 ―戦後70年以上たった今の時代に、大和を題材にした映画を作る意味を、どう考えていますか。
 今の日本に対して、「ちょっと危ういな」と感じる部分があるんです。なんだかんだ言って、平和な時代が続いていたけれど、ここに来て、ぼんやりとしたきな臭さみたいなものがあって、「怪しいな」と。
 いろいろな人が戦争前夜に似ていると言うけれど、(当時のように)ある大きな流れにはまったとき、国民もどうしようもなくなってしまうのではないかという空気感を僕も、うっすらと感じます。
 今回、当時のように国や国民が危うい方向に向かう時代を描写することで、「今はどうなの」と、考えてもらえる映画を作るのは、悪いことではないなと思いました。
 「1回負けたんだから、そのきな臭い感じに気付こうよ」と言いたい気持ちもあります。

■「アルキメデスの大戦」あらすじ■
 1933(昭和8)年、欧米列強との対立を深めた日本で、海軍省は世界最大の戦艦「大和」建造計画を極秘に練る。「今後の海戦は航空機が主流」と考える海軍少将・山本五十六(舘ひろし)は、いかに国家予算の無駄遣いかを独自の見積もりで明白にしようと考え、天才数学者・櫂直(菅田将暉)を起用。櫂はその頭脳と行動力で問題点を追及していくが―。他に柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、小林克也、國村隼、小日向文世、橋爪功、田中泯が出演。

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