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「真夜中の子供」映画化へ着々

=来年公開、辻仁成監督が会見=

 芥川賞作家の辻仁成原作・監督の映画「真夜中の子供」の撮影がこのほど、福岡市内で着々と進められた。九州最大の歓楽街である福岡・中洲を舞台にした小説は2018年に出版され、映画は20年夏に公開予定。親が夜働き、虐待も受け、夜の街を出歩く無戸籍の少年が、山笠や中洲の人々と絆を深めながら生き抜く姿が描かれる。

 物語の中心を担うのが2人の子役。「加藤蓮司(れんじ)」役の古賀迅人(はやと)君(8)と、「滝本緋真(ひさな)」役の加来遙乃(かく・はるの)さん(9)だ。辻監督は「天真らんまんな男の子と、子役として優れ才能がある女の子」と言う。二人は原作のイメージそっくりだが、映画ではどう描かれるか。博多伝統の夏祭り「博多祇園山笠」期間中の7月8日、辻監督や子役、映画スタッフらは櫛田神社(福岡市博多区)で映画の成功を祈願。同14日には、中洲流(ながれ)の山笠の舁(か)き手(担ぎ手)約100人、エキストラ約500人を動員し、山笠本番さながらの撮影が報道陣に公開された。辻監督は櫛田神社でメディアの取材に応じ、今回の映画撮影について語った。

 辻監督の会見要旨は次の通り。

■「主役はこの子しかいない」

 ―子役の男の子と女の子のキャスティングのポイントは。

 辻監督 福岡の人という限定で人を集めた。ナチュラルな博多弁がしゃべれるということ、福岡で生まれ育っているということが非常に大切で、福岡の子が二人選ばれた。男の子は非常に天然な子。女の子は非常に優れていて、才能がある子。天真らんまんな彼と、真面目な彼女と、バランスよく子役に恵まれたと思って選んだ。

 ―選考で迷ったことは。

 辻監督 (役名の)「緋真(ひさな)」はすぐに決まった。演技がうまくて、いわゆる子役中の子役という感じ。一方、「蓮司(れんじ)」はリハーサル中も、「あ!さかなが!」と言って、どこかへ行ってしまうことがある。あのキャラクターは本当に存在しない。それでもオーディションでは落選できず、ずっと残ってもらった。結局、最後は「彼しかいない」と決めた。1人は迷わず。1人は迷い続けて。気がついたら「この子しかいない」と。最終的には全会一致で決まった。本当に変わった子だ。

 この映画は虐待された男の子が、中洲の山笠の人に支えられながら生きていくという話。彼を選んだ最大の理由は、どんな状況になっても笑い続けるところ。原作の中には(男の子が)泣いたりするシーンはあるが、彼に会ってからは(そのシーンは)必要ないと思った。山笠に憧れている男の子が山笠を見て、自分はここで生きていくと。中洲が育てる子だ。それで「真夜中の子供」というタイトルです。

 ―博多祇園山笠の期間中の撮影だが。

 辻監督 (山笠期間中は)ほとんどドキュメンタリー。実際に博多の中でこの物語が展開するので、全部押さえる。特に夏の撮影は山笠の「中洲流(ながれ)」に密着して、(最終日7月15日の)「追い山」まで全部撮る。この映画の主役は男の子であり、山笠だ。

 ―映画は世界にも発信するというが。

 辻監督 インドネシアとの合作だ。インドネシアも博多に関心がある。山笠というのは大きな宣伝ポイントでもある。櫛田神社を中心として、中洲には毎日何十万人もの人が出入りするわけだから、その魅力を映画で撮りたい。そういう意味では、アジアで公開できるように頑張っていきたい。

 インドネシアでは最初に公開する予定だ。

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