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NHLへつながる細い糸 平野裕志朗が抱く大志

「ここから数年が勝負」

 AHLのペンギンズは契約の際に「長い目で見たい」と言ってくれた。昨季、最後に1試合だけ回ってきたチャンス。前夜にこう思ったという。「ただ出ました、というのは嫌だ」。AHLは難しい。「NHLで何百試合もやってきた人が落ちてきて、そういう選手を相手に結果を出すのは簡単ではない」。チームメートからもそう聞いていたからこそ、ポイントに執着した。わずか1アシスト、されど1アシスト。0と1。その差は小さくはない。次へつながったと思った。

 北米での1シーズンを経て、平野にとってNHLは「行けないことは決してないもの」になった。最大の持ち味で、自信の源になっているのはシュート。打つ瞬間のパックの位置が良く、リリースが速い。身長185センチ、体重100キロと北米では突出した体ではないが、体重をスティックに伝え、パックの回転を生み出す。「キーパーがキャッチ、セーブしにくく、重いと言われる。連動と体の流れがポイント」。監督やチームメート、相手チームの選手からもNHLレベルと評された。

 NHLへの挑戦は「ここから数年が勝負」。年齢的な壁も意識しているが、日本のアイスホッケーを取り巻く現状への憂いがそう言わせる。男子は開催国枠で出場した1998年長野大会を最後に五輪から遠ざかり、リーグでも複数のチームが廃部の道をたどってきた。長き停滞―。FWとして日本出身初のNHLプレーヤーとなり、そこで定着して活躍できれば「日本のアイスホッケー界にいい影響、いい刺激を与えられるのではないか」。自身の名声だけではない大志を抱く。

◇ ◇ ◇

 平野裕志朗(ひらの・ゆうしろう) 北海道苫小牧市出身の23歳。北海道・白樺学園高を経て、2014年にアジアリーグの東北フリーブレイズ加入。15年に北米アイスホッケーリーグ(NHL)のブラックホークス、16年にシャークスのルーキーキャンプに招待参加。18~19年シーズンに3部ECHLのウィーリング・ネイラーズで67試合に出場し、57ポイント(19ゴール、38アシスト)。19年1月に2部アメリカン・ホッケー・リーグ(AHL)のWBSペンギンズと契約し、出場1試合で1アシスト。19年世界選手権日本代表。ポジションはFW。185センチ、100キロ。(2019年6月27日配信)

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