五輪の花形種目、マラソンの日本勢が長い低迷期から抜け出しつつある。大きなきっかけとなったのが、日本陸連が新たな五輪代表選考として導入し、9月に実施したマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)。東京五輪3年前の2017年夏から選考をスタートさせることで、長期的な強化に結びつけた。
河野匡・長距離マラソンディレクターは「日本が世界で戦うイメージが消え去っていた。マラソンに本気で取り組む選手を多くつくらないと駄目だと思った」と創設の契機を振り返る。一定のタイムや順位を満たした選手にMGCの出場権を与える「2段階選抜」とし、複数回で結果を残さなければいけない仕組みにした。
「この流れでマラソンを深く知り、『マラソン力』が上がった」。トラックで実績のあるスピードランナーが次々とマラソンに転向し、経験を重ねた。MGC本番は従来になかった「一発選考」。沿道で52万人が見守った緊張感あるレースを突破して代表に決まった男女各2選手について、「ものすごい自信を得たと思う」と成果を強調する。
本番の開催地が札幌に急きょ変更され、レースの高速化は想定している。その上で「当日の天候はどうなるか分からない。臨機応変に判断できる準備をしておかないといけない」。選手には血液検査などで体への理解を深め、あらゆる気象条件とレース展開に備えるように助言した。
日本勢の五輪表彰台は、男子は1992年バルセロナ銀メダルの森下広一、女子では2004年アテネ金の野口みずきが最後。「100%の状態でスタートラインに立たせたい」。MGCの最終的な評価は、北の大地に舞台が移った五輪の結果によって下される。
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河野匡(かわの・ただす)大塚製薬陸上部部長兼女子監督。筑波大時代は箱根駅伝に4年連続で出場。1982年アジア大会3000メートル障害で優勝。59歳。徳島県出身。(2019年12月1日配信)
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