近代五種はフランスの故事から始まったとされる競技だけに欧州勢が強い。水泳、フェンシング、馬術、射撃とランの総合力が問われ、「キング・オブ・スポーツ」とも称される。五輪での日本勢最高成績は女子の13位。世界の壁は厚い。
かつては射撃で実弾入りの銃が使われ、日本は銃刀法規制が厳しいため競技環境が警視庁と自衛隊にほぼ限られた。日本のトップ選手は水泳、陸上からの転向組。幼少期から五種に取り組む海外勢には経験で及ばないが、強化ポイントは明確だ。日本協会の立野宏幸強化委員長は「(女子で)メダルを取るためのカギはフェンシング」と言う。
女子は五輪での歴史も浅く、200メートル自由形の水泳、射撃と陸上800メートルを交互に行うレーザーランは実力差が小さい。差が付くのは直接対決のフェンシング。35戦総当たりのランキングラウンドは勝率7割を250点とし、1勝ごとに増減する。立野強化委員長は「(勝率7割の)25勝を目標にする」とメダルへのノルマを語る。
6月のワールドカップ・ファイナルで日本勢最高の10位だった朝長なつ美(警視庁)、13位の山中詩乃(自衛隊)はともに20勝15敗だった。5勝の上積みへ、協会は五輪直前にフェンシング専門の日本人コーチを招く予定。立野強化委員長は「1分間のせめぎ合い。データが互いに分かっている中での戦術、戦略を」と思い描く。
もう一つのポイントは馬術。乗る馬は直前の抽選で決まるが、開催国の日本が全国の乗馬クラブから18頭を調達する。「馬の特徴を日本語で聞いておけるのは助かる」。ここでは地の利を生かす。
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立野宏幸(たての・ひろゆき)高校時代は競泳選手。日体大で近代五種を始め、警視庁へ。全日本選手権優勝3度。2014年から母校の日体大で近代五種部監督を務め、17年から日本協会強化委員長。東京都出身。60歳。(2019年10月13日配信)
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