日本水泳連盟の平井伯昌競泳委員長の表情に危機感がにじむ。東京五輪では「金メダルを含むメダル2桁」を目標とすべきところだが、「リオデジャネイロ五輪(金2、合計7)などと同じ数のメダルを取るのはなかなか厳しいと感じている」。前々回ロンドン五輪は合計11個。これらに並ぶ水準のメダル獲得も難しい、という現状がある。
世界選手権(7月、韓国)の選考会だった日本選手権とジャパン・オープンで、期待したような好記録が出たのは一部にとどまった。「世界水泳は厳しい戦いになる」。不調の萩野公介(ブリヂストン)、病気療養中の池江璃花子(ルネサンス)という男女のエースを欠いたにしても、メダル獲得や入賞を想定し定めた個人の派遣標準記録を突破したのは16種目だった。
「まずは世界水泳で金メダルを取れるかどうかが大きな課題。4年前は3人が金メダルを取って勢いが出た」。選考会で好記録を出した男子200メートル平泳ぎ世界記録保持者の渡辺一平(トヨタ自動車)、400メートル個人メドレーでリオ五輪銅メダルの瀬戸大也(ANA)に大きな期待を寄せる。
女子では昨年のパンパシフィック選手権で個人メドレー2冠の大橋悠依(イトマン東進)がエース格だが、「記録を上げていかないとメダルは無理」。日本が得意としてきた女子平泳ぎの記録低迷は想定外。平井氏は「一定の基準でつくった記録に満たないのは、日本が停滞していることの表れ」と厳しく指摘する。
代表は一つの強豪クラブから多くの選手が出るのではなく、所属がばらばら。情報共有やチームの結束は重要な強化ポイントだ。全体のレベルアップという意識統一はできており、日本選手権後のオーストラリア合宿では「みんなが手の内をさらけ出してやっていた」という。
メドレーリレーやリオ五輪銅メダルの男子800メートルリレーにも重点を置く。「タイムランキング上位の選手を拾ってナショナルチームに入れ、強化を進める」。底上げしてメダルを狙えるチームへの脱皮を図る。
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平井 伯昌(ひらい・のりまさ) 早大卒業後、指導者として実績を重ねる。アテネ、北京の両五輪で男子平泳ぎ2冠の北島康介らを指導。09年に早大大学院スポーツ科学研究科修了。同年から日本代表ヘッドコーチ。15年から日本水連競泳委員長。56歳。東京都出身。(2019年6月16日配信)
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