東京五輪は、飛び込みが存在感を高めるチャンスだ。競泳やシンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)が数々のメダルを獲得してきた一方、飛び込みはゼロ。だが有望な選手が育っており、日本水泳連盟の伊藤正明飛び込み委員長は「とりあえずメダルを一つ。銅メダルの可能性は十分ある」と現実的な目標を掲げる。
「表彰台に一番近い種目」と期待を寄せるのが女子高飛び込みだ。19歳の板橋美波(JSS宝塚)は、女子では他にできる選手がいないと言われる高難度の「前宙返り4回半抱え型」を得点源とする。2016年リオデジャネイロ五輪で8位、翌年の世界選手権では7位。強化費の重点配分で練習環境も整い、確実に前進していると伊藤氏も見ている。
すねに慢性的な痛みが生じる「シンスプリント」で苦しんでいた板橋は、今年になって手術に踏み切り順調に回復。まだ本格的な練習はできないが、「6月に中国で行う合宿に参加してもらう。足を使わない練習もある」。
板橋が欠場した4月の日本室内選手権を制した15歳の金戸凜(セントラルスポーツ)も有望。祖父母と両親がいずれも五輪経験者という家系で、伊藤氏が「入水の切れ、垂直に水に入る感覚に優れている。3世代というのも注目してもらえるところ」と請け合う。日本スポーツ振興センター(JSC)の選手強化事業の対象になり、海外を拠点に強化を続けている。
13歳で五輪を迎える男子高飛び込みの玉井陸斗(JSS宝塚)にも期待する。既に五輪や世界選手権のメダリストと同等の演技構成で、日本室内選手権は圧勝だった。「もう少し精度を上げないといけないが、可能性はものすごくある」。板橋、金戸と同様に、過去の五輪や世界選手権の3位の得点には十分届くレベルだ。
ペアで飛ぶシンクロの各種目は開催国枠で出場できる。「ホスト国としてビリでは示しがつかない」。各選手のレベルアップを期待する。
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伊藤 正明(いとう・まさあき) 日体大卒。81年日本選手権の高飛び込みで優勝。80年モスクワ五輪は代表入りしたが、日本がボイコットしたため出場できなかった。13年から日本水連飛び込み委員長。62歳。新潟県出身。(2019年6月2日配信)
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