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単なる犯罪映画にとどまらない複層的なドラマ 監督・水谷豊が紡いだ「轢き逃げ―最高の最悪な日―」

名作思わせ、映画愛感じられる趣向も

インタビューに応じ、「人間の心の奥底にあるものを描きたかった」と今回の映画作りを振り返る水谷豊監督【時事通信社】

インタビューに応じ、「人間の心の奥底にあるものを描きたかった」と今回の映画作りを振り返る水谷豊監督【時事通信社】

 単純に割り切れない人間の複雑な感情を追求する物語作り。ロケ現場(神戸)の街としての魅力を最大限に生かす撮影のアプローチ―。前作「TAP―」と題材は異なるものの、こうした〝水谷タッチ〟は今回の「轢き逃げ―」でも健在だ。

 犯罪物を基調としながら、青春や家族、心理サスペンス、アクションまでさまざまな要素を入れ込み、「太陽がいっぱい」「サイコ」など過去の名作を思わせる趣向からは、水谷監督の映画愛も感じられる。

 撮影では、スタッフに基本的なイメージは伝えるものの、「後はお任せ」のスタンスを取るのが水谷監督。信頼を受けたスタッフも監督の期待に応え、力感のある映像を生み出している。

 音響面でも、邦画では初の「ドルビー・アトモス方式」を採用。繊細な音響効果によって登場人物の心理を浮かび上がらせることに成功している。

 ひき逃げ犯となる主人公2人を演じる中山と石田は、一般的な知名度は高くないが、確かな演技力で作品に溶け込んだ。水谷監督は前作でも無名の若手俳優を中心にオーディションでキャスティングしており、次代を担う俳優を育てたいという思いの強さが伝わってくる。(時事通信社 小菅昭彦)

 企画制作・時事通信社総合メディア局

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