俳優、水谷豊さんの監督作第2弾となる映画「轢き逃げ―最高の最悪な日―」(5月10日、東映系公開)。あるひき逃げ事件を軸に、人間の心の奥底に迫る骨太なサスペンス作品だ。その重厚な絵作りに決定的な役割を果たしているのが、港のある地方都市という設定で舞台となった神戸市の風景だ。灘区と東灘区を中心に主な撮影地を訪ねた。
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水谷さんは今回の作品で、ひき逃げに遭って死亡する被害者女性の父親、時山光央役で俳優としても出演している。父の悲しみを映した自宅のシーンでは、窓の外にケーブルカーが走る様子が見える。
灘区西部の住宅街と六甲山の中腹の「虹の駅」を結ぶ「摩耶ケーブル」だ。山麓駅近くには実際に住宅が4軒ほど立っており、ケーブルカーがすぐ脇を上り下りしていく。
開業は1925年と古く、神戸の街と共に歩んできた。太平洋戦争と阪神大震災で2度、営業休止に追い込まれたが、復活した経緯がある。途中にトンネルもある珍しい構造で、高低差312メートルを5分で稼いでくれる。
神戸港に着岸した豪華客船が手に取るように見える「虹の駅」からの眺めも素晴らしいが、ここから55年開業の「摩耶ロープウェー」でさらに上の「星の駅」へ。
展望広場「掬星台(きくせいだい)」からは、神戸市中心部から大阪までの大展望が広がる。六甲山系の一つ、摩耶山の山頂に近く、標高約700メートル。下界より風が冷たい。ケーブルカーとロープウェーは、週末などは夜間営業しており、まさに「星を掬(すく)う」ような夜景が楽しめるといい、日本三大夜景の一つにも選ばれている。
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