大統領を弾劾できなければ、選挙で倒すしかない。トランプ氏は早くも20年11月の大統領選再選に向けて、多くの仕掛け・布石を打っている。
まず世界を驚かせたのは、トランプ氏が3月25日、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談した際、シリア南西部の占領地ゴラン高原に対するイスラエルの主権を正式に認める文書に署名したことだ。イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、シリア領だったゴラン高原を占領。81年に併合したが、国際社会は認めていない。
ゴラン高原の面積は約1800平方キロで、イスラエルの面積の8%強。トランプ氏は国際社会の猛反発をよそに「イスラエルの自衛能力を促進するための歴史的な行動」と主張する。しかしその真の狙いは米国民の4分の1を占め、親イスラエルのキリスト教福音派からの支持を固めることにある。
内政面では、不法移民の流入を阻止するため「対メキシコ国境を閉鎖する」と警告。移民らの一部出身国、中米のエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスに対しては援助停止を指示した。さらに、政治的な独立性が求められる連邦準備制度理事会(FRB)に対し、利上げは「間違いだ」と非難。トランプ氏は前回大統領選で陣営の経済顧問を務めた保守派をFRB理事に指名し、満を持して最高裁判事に続いてFRBの「保守化」にも乗り出したかのようだ。
CNNテレビの世論調査によると、民主党支持の80%がトランプ氏は潔白でないと答えたものの、共和党支持の77%が「潔白」と回答した。トランプ氏は、岩盤と言われる保守支持層をさらに強固にするために一連の政策をゴリ押ししていくとみられている。
日本にとっても、トランプ氏の攻勢はひとごとではない。5月下旬の国賓待遇での来日を控え、日本と米国の新たな貿易協定交渉で一定の方向性を見いだす必要に迫られるからだ。日本側交渉関係者の1人は「もしロシア疑惑が長引けば、トランプ氏は貿易交渉どころでなくなるだろうと期待していた。(捜査終了で)野に放たれた獣(けもの)になるかもしれない」と話す。
トランプ政権が大統領選を見据えて「農業」「自動車」の市場開放に矛先を向けてくれば、日本側は非常に苦しい立場に追い込まれることになる。
特集
コラム・連載