アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症は、本人よりも家族や周囲に暮らす人たちが大きな精神的、金銭的な負担を強いられるのが常だ。その一方で、回復に向けては、そうした家族らの支援が不可欠。周囲の人たちが取るべき対応策、避けるべき行為などについて、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の松本俊彦・薬物依存研究部長に聞いた。
転ばぬ先のつえは逆効果
――健康と依存症の境目は
アルコールの場合、医学的な問題が出ても減らせない、やめられない、職業上のトラブルが出ても改められないと依存症と言っていい。ギャンブル依存症の場合は、当たるともっと当たりを求めて勝負し、大負けすると負けた分を取り返そうと次の戦いに挑む。このため、借金や家族の預金を解約したり、子どものお金を使ったり、会社の金を横領したりする。気晴らしでは済まなくなるのは、アルコール依存症と共通だ。
精神保健福祉センターに相談を
――家族や周囲が避けるべき行動は
頭ごなしの説教や叱責、24時間の監視体制とか暴力は効果がない。アルコール依存症の場合は、嘔いたものをきれいに片付けたり、飲み屋のつけを家族がこっそり払ったり。ギャンブル依存症の場合は、借金を肩代わりしたり、チャラにしたりするのはやめてほしい。本人が依存を続ける状況を維持する格好になってしまう。
転ばぬ先のつえとか、先回りした支援は避けなくてはいけない。行動の結果を現実に本人に分かるようにする、本人に気づかせることが大切だ。
――取るべき対応は
本人は何も気づけない状態で、家族が「あなたには問題がある」と言っても、「なぜ文句ばかり言うんだ」となってしまう。病院に相談すると「本人を連れてきて」と言われるが、本人は行きはしない。まずは、都道府県や政令指定都市に少なくとも1カ所はある精神保健福祉センターに相談してほしい。1回の相談では解決しないが、継続的に相談する中で、本人に対する関わり方のこつを教えてもらえる。
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