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108日続いたゴーン拘留、仏メディアが日本の司法制度をやり玉に

アニエス・ルドン

 3月6日に保釈された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告。他に例を見ない国際的な大企業のトップの逮捕と長期間の拘留は、一方で日本の司法制度の複雑さ、先進国の司法との「落差」を世界に露呈した。ゴーン被告がフランス籍であることも手伝って、フランスメディアの日本の司法に対する風当たりは特に厳しい。

日本は原則「推定有罪」

 「世界中から日本の司法制度への非難が起きている」「(日本の捜査当局は)言うことを聞かない人たちを粉砕する」「間違った自白を導く圧力装置」─昨年11月19日のカルロス・ゴーン被告逮捕以降、フランスのマスコミはほぼ異口同音に日本の司法への批判を繰り返している。その一方で、ソーシャルメディアに掲載される一般市民からは、ゴーン被告の逮捕と彼に対する日本の取り扱いは妥当として日本の当局の厳しい対応をむしろ歓迎する声が聞こえる。

 「誤解してほしくない。多くのフランス人は、『ゴーン被告は非難されるべきであり、当然裁かれるべきだ』と考えている。私自身もこの金の亡者に何のシンパシーも感じない」─フランスの大手ラジオ局の編集幹部はこう語る。とはいえ、「有罪であろうとなかろうと、日本のように『推定無罪』の原則を侵すようなことは認められない」「われわれは皆、日本は因習にとらわれていない国だと考えているのに、これはショッキングなことだ」「実際にヨーロッパでは日本の司法は独裁体制下のそれと似たようなものだと捉えた」などと厳しく訴える。

 さらに、同幹部は今回の事件が、欧州の大企業のトップは日本へのビジネス出張に二の足を踏ませるような影響をみせていると語る。「これまで非常に良好だった日本のイメージをひどく傷つけている」とし、これまで好印象だった日本ブランドを傷つけかねないと指摘する。

 1月28日付仏経済紙トリビューヌに掲載されたミッシェル・サンティ氏の記事も厳しい警告を鳴らす。「ゴーン事件によって暴かれた日本の司法」と題するこの記事は、日本の司法が推定無罪の原則を尊重しないことで、以下のような問題点があると指摘する。

 「無制限の拘束、資料の閲覧禁止、弁護士不在のままでの昼夜を問わず繰り返される取り調べ、条件が極端に厳しい留置などであり、たとえ物理的な暴力が行われているのではないにしても、こうした非人道的な手法が広範に取り入れられている。日本の民主主義は推定無実の原則も容疑者による批判の権利にも配慮しない。日本の司法制度の基本は、『推定有罪』である」と批判する。

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