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【点描・永田町】安倍首相が吹かせた解散風の行方

政治ジャーナリスト・泉 宏

 2019年、平成最後の年明けから永田町で解散風が吹いている。「伝家の宝刀」を持つ安倍晋三首相が、新年あいさつなどで選挙絡みの発言を繰り返したからだ。

 もともと自民党内では、7月に予定される参院選に合わせての衆参同日選論がささやかれていることもあり、与野党の現職衆院議員や立候補予定者は「常在戦場」とばかりに、正月休み返上で選挙区でのあいさつ回りに駆り立てられた。

 一連の新年会巡りの締めくくりとなった1月7日の時事通信社関連5団体の互礼会であいさつに立った首相は、直前の主催者代表とのツーショットでの記念撮影について「選挙ポスターの撮影みたい」と切り出し、会場をざわつかせた。

 続いて、新年あいさつの定番となった亥(い)年に絡めた蘊蓄(うんちく)として、「イノシシは猪突猛進のイメージが強いが、実はその動きは自由自在で、ひらりとターンしたりできる身のこなしがしなやかな動物」と解説した上で、「ダブル選挙との噂(うわさ)もあるが、頭の片隅にもない。この6年間に(解散を)2回やったが、今は全くどこにもない」と、意味ありげな笑顔で会場を見回した。

 壇上の首相を最前列で見上げていた山口那津男公明党代表や原田稔創価学会会長は、「山口代表も何とか安心していただけたのでは」との首相の言葉に苦笑するばかり。その周囲に集まっていたメディア各社幹部らは「首相はやる気だな」とささやき合い、居合わせた政財官の各界代表者も顔を見合わせてうなずき合った。

 首相にとって「解散戦略は秘中の秘」であることは言をまたない。昔から「首相は解散と公定歩合については嘘(うそ)をついてもいい」というのが政界の定説でもある。だからこそ、ポスト安倍の有力候補の石破茂元自民党幹事長も「頭の片隅にはなくても、真ん中にあるかもしれない」と苦笑する。

 解散権を持ったことのある首相経験者は「首相が否定の言葉を繰り返すほど、『怪しい』となるのが政界の常」と解説。首相の実弟の岸信夫衆院議員も「(兄は)選挙が好き」と明かす。

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