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「自動運転」で何が変わる?~記者が体験~

東京五輪を照準に

 政府は、2020年の自動運転実用化を目標として掲げている。同年に東京五輪・パラリンピックを迎える日本にとっては、世界から注目を集める大会期間中に、自動運転の最新技術を発信したいという狙いもある。

 日本自動車工業会は20年7月、羽田空港など3地域でレベル2~4に相当する自動運転の実証実験を公開する計画。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど大手メーカー10社が計約80台を走らせる予定で、大規模なイベントになりそうだ。

 政府も20年までに高速道路で走る自家用車について、レベル3までの自動運転実現を目標に掲げる。国交省によると、高速道路は基本的に信号がなく、対向車線のことを考えずに走行できる上、歩行者や自転車が進入する心配もないため、一般道と比べ、自動運転を実施しやすいのだという。

 国はまた、同年までに、中山間地など地域を限定した上で、レベル4による無人自動運転移動サービスの実現も目指している。買い物や病院に行くための唯一の交通手段である路線バスが廃線の危機にさらされている―。そんな地域の高齢者にとって、安全で効率的な無人運転サービスは、日々の生活を支えてくれる救世主になるかもしれない。

 実用化に向けた制度づくりも進む。国交省は18年9月、自動運転のレベル3と4の安全性に関する指針を策定した。指針には、世界で初めて、自動運転車の目標として「人身事故がゼロになる社会の実現」が盛り込まれた。

 その上で、10項目の安全要件を設定した。例えば、車種ごとに自動運転システムが正常に作動する地域や条件を「運行設計領域」として明示し、領域外では動かないようにすると規定。また、いつ、どこで自動運転が作動したかのデータを記録する装置の搭載や、テロなどに悪用されないためのサイバーセキュリティー対策などを求めている。

 しかし、万が一、自動運転中に事故を起こしてしまった場合、ドライバーとメーカーのどちらが責任を負うかといった法的な整理は、今後の大きな課題となっている。

 そもそも、道路交通法などの国内法や、国際的なジュネーブ条約では「運転手」が車両を運転することが前提だ。実証実験を行う場合には、安全確保措置を講じるなどの条件付きで公道での走行が認められるが、実用化段階で自動運転を法的にどう位置付けるかは、現時点で明確になっていない。

 「法的な問題をクリアしなければ、レベル4の技術が一定レベルに達したとしても、実際には走らせることができない。国の議論が待たれるところだ」。10月に自動運転の実証実験を行った東京都の担当者も指摘していた。

 都の試乗会には173組、315人が参加。試乗前後で都が参加者に聞いたアンケートでは、自動運転について「安心だ」と答えた人は、試乗前の約6割から、試乗後には約9割に増加した。都は「実際に体験することで、自動運転への安心感が高まることが分かった。引き続き機運醸成に取り組みたい」(担当者)とした。

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