会員限定記事会員限定記事

2018年、コンサドーレはなぜ躍進したのか

若手の成長はクラブの未来

 今季は若手の起用も目立った。監督は「四方田さんがいいベースをつくってくれた。昨シーズンがあったからこそ、今の成長があると思っている」とこれまで築いてきたクラブの財産に敬意を表する。

 浦和を率いたときは古巣の広島から、戦術に精通した教え子たちを毎年のように引き抜いた。だが、資金が潤沢でない札幌で同じような補強はできない。そこで重視したのは下部組織出身の若手たちだった。

 22歳の進藤や20歳の菅がスタメンに定着、23歳の深井一希も出場試合数を増やした。指揮官は選手たちに「高い目標を持て」と言い続けた。昨年は目標に残留を掲げていた選手たちも、シーズン終盤にはACL出場を堂々と口にできるようになっていった。

 監督は「若い選手たちが多いチームの中でベースをつくっていく。1年1年、経験を積みながらチームとして成長できる」。目先の順位よりも将来を見据えた土台作りを重視、その上で「4位という順位よりも大きな成果だと思う」。数字以上の手応えを感じていたようだ。

 開幕前に野々村社長は今季の目標を「まずは残留とその先のトップ10入り」を掲げていただけにクラブにとってうれしい誤算だったかもしれない。監督も「1年で思っていたよりも少し早い前進をしてしまった」と苦笑いするほどだ。主将の宮沢裕樹はACLを目前で逃したことに悔しさをにじませながらも「まだまだこのチームには伸びしろがある。上位争いをした経験や、最後に感じた悔しさを生かしていきたい」と語った。

 来季は他チームのマークが厳しくなることも予想されるが、ペトロビッチ監督は最終戦後に「今シーズンを超える結果を来シーズンも求めていきたい。皆さんの期待値も高まっている。それに応えたい気持ちをもちろん持っている」と語った。

 1年目で得た自信を礎に選手たちは新たにどういう伝統をつくっていくのか。今季、初めて見る景色に熱狂した北海道のファンと道内メディアが注ぐ視線は温かく、期待に満ちている。「メディアは負けたにもかかわらず、いいことを書きすぎなんじゃないか、と思うこともある」。監督のぼやきも聞こえてきそうだが。(札幌支社編集部・藤井隆宏)

◆スポーツストーリーズ 記事一覧

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ